放送内容

第1606回
2021.12.26
科学ニュース2021 物・その他 地上の動物 水中の動物

 日々大量に発表される、科学にまつわる新たなニュース。優れた研究は数あれど、実は私たちの耳にまで届くことは意外と少ないんです。そこで、科学番組として30年以上の歴史を持つ目がテン!が、去年に引き続き、2021年の気になる科学ニュースをお伝えしちゃいます!動物にまつわる驚きのニュースや、日本の未来を担う若者のニュース、私たちの生活に役立つかもしれないニュースまで目がテン!が勝手に選んだ科学ニュースを一挙紹介!
 今回の目がテン!は、スペシャル企画!「もっと知って欲しい!科学ニュース2021」です!

イカは“ガマン”ができることが明らかに!

 これまで、霊長類やカラスなど一部の脊椎動物にしか「ガマン」をすること、つまり自制心は確認されていませんでした。しかし、無脊椎動物であるイカにも、「ガマン」ができることが明らかになりました。それが、寿司ネタとしても人気の「コウイカ」の一種。

 イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームは、6匹のコウイカに対して、好物の生きたエビを食べるためにどれくらい我慢できるか、実験を行いました。 この実験では、扉がついた、エサを入れるための箱を水槽内に2つ設置。一つはすぐに開きますが、もう一つは一定の時間が経たないと開かず、エサは一方しか食べられません。すぐに開く箱には「エビのむき身」を入れ、時間が経たないと開かない箱には大好物の「生きたエビ」を入れます。イカは、「エビのむき身」をガマンして好物の「生きたエビ」をゲットすることができるんでしょうか?

 実験開始!まずは、「エビのむき身」が入った箱が開きます。本当はすぐにむきエビを食べたいイカですが、 誘惑に負けないよう、あえて目をそらしているようです!そして、「生きたエビ」が入った箱が開くと、すぐにエビを捕らえ、食べはじめました!大好物の生きたエビを食べるため、むきエビをガマンしたんです!実験の結果、一番ガマンできないイカでも50秒、ガマン強いイカは、なんと2分以上も待つことができると判明したのです!イカの驚くべき能力がわかった新発見でした。

ミジンコは死んだふりをして生存率を上げていた!

 「死んだふり」、つまり「擬死」と呼ばれる行動は、昆虫や哺乳類など多くの動物で観察され、捕食者から身を守る行動の一つと考えられています。そして、水中で生活する0.5ミリほどのマルミジンコ類も、天敵に襲われると動きを止める、擬死行動を示すことが既に明らかになっていました。

 実際に「死んだふり」をすると、生き残る確率がどのくらい上がるのか?東北大学の研究グループによって検証されたんです。

 その結果、死んだふりをせず、そのまま泳いで逃げた場合、22パーセントが捕食されたのに対し、死んだふりをした場合、4パーセントしか捕食されなかったのです。小さな動物プランクトン・ミジンコの生態には、賢い生存戦略がありました。

水中であくび!?イルカの新発見

 私たち人間を含め、多くの陸上動物は「あくび」をします。あくびは従来、空気を吸って吐く、呼吸を伴うものだと考えられてきました。しかし今回、三重大学の研究により、呼吸ができない水中で、イルカがあくびをすることが明らかになったんです。

 研究では、水族館で飼育されているハンドウイルカをのべ119時間観察し、あくびのような行動を5例発見しました。完全な水中生活をする哺乳類において、あくびの報告例は世界初とのこと。呼吸を伴うと考えられてきたあくびが、呼吸のできない水中でも行われると判明した、非常に重要な新発見だったんです。

蚊の唾液に痛みを抑える効果があることが判明!

 蚊に刺されても、その瞬間は気づかず、かゆくなって後で気づくということが多いですよね?これまでは、蚊の口にある針が0.07ミリほどと極めて細いため、感覚神経に当たりにくいことが、刺されたと感じない原因だと考えられていました。

 しかし、愛知県の生理学研究所のチームは蚊が刺す時に出す「唾液」に着目しました。
 研究チームは、マウスを使って実験を実施。マウスは、痛みを感じるとその部分をなめる行動を取ります。マウスを二つのグループに分け、足の裏に、痛みを感じさせるトウガラシやワサビの成分を注射。片方のグループには蚊の唾液を混ぜ、足の裏をなめる回数を比較しました。すると、痛みを起こす物質だけを注射したマウスより唾液を混ぜたものを注射したマウスの方が、足をなめる回数が少なかったのです。

 これはつまり、蚊の唾液が痛みを抑えていたということ。蚊の唾液に含まれるタンパク質「シアロルフィン」という成分が、痛みを感じるセンサーの機能を抑制していると考えられるんです!
 さらに、蚊だけでなく、マウスの唾液も痛みセンサーの機能を抑制することがわかったそう。
 私たちヒトを含む多くの動物も、けがをしたときに傷口を舐めますが、それは、唾液で痛みを抑えようとする生き物の本能なのかもしれません。

小学生が研究!「カブトムシは夜行性」の常識を覆す

 昆虫の王様、カブトムシ。 基本的に夜行性で、クヌギなどの木を好み、日中は木の茂みや土の中などに身を潜めています。しかし、「シマトネリコ」という木では、カブトムシが日中も活動することが分かったんです。
 調査をしたのは、埼玉県の小学6年生、柴田亮くん。柴田くんは、家の庭にあるシマトネリコの木を見て、夜行性であるカブトムシが、昼間もやってきていることを不思議に思い、2019年に小学校の自由研究として観察を始めたんです。

 調査していく中で、山口大学大学院講師で、カブトムシ研究者の小島渉先生とやりとりするように。そして、調査2年目には小島先生のアドバイスもあり、カブトムシに印をつけ、それぞれの個体ごとの行動も分かるようにしたんです。
 夏休みを利用し35日間、少なくとも朝昼晩3回、多いときには1日13回も観察。162もの個体の記録をとりました。

 すると、柴田くんの研究によって、「夜行性」であるはずのカブトムシが植物によっては日中も活動するということが科学的に示されたんです。そして、小島先生がそれを論文にまとめ発表。生態学の権威ある雑誌『エコロジー』に掲載され、世界に認められたんです!

 さらに、この研究には続きが。2021年の夏に、柴田くんは、カブトムシが日中に活動する理由を調査していたんです。
 注目したのは、カブトムシの体重。柴田くんが飼育していたカブトムシは、夜に昆虫ゼリーを食べて、日中はほとんど隠れていました。このことから「昆虫ゼリーでは夜のうちに満腹になれるから昼間は隠れている、シマトネリコでは逆に、夜のうちに満腹になれていないのではないか?」と考えて、樹液を食べる前と、食べ始めてから1時間後の体重の増え方を調べることにしたんです。
 その結果、クヌギでは、1時間で平均0.17グラム体重が増えたのに対し、シマトネリコでは、平均0.04グラム減ってしまっていたんです。

 カブトムシは、クヌギでは樹皮を削らず出ている樹液を食べるのに対し、シマトネリコでは樹皮を削って樹液を食べています。削りながら食べるため、シマトネリコからは少量ずつしか樹液が食べられず、体重も増えにくいのではないかということだそう。このことから、シマトネリコに集まるカブトムシは、なかなか満腹にならないため、日中も木に留まって活動していると考えられるんです。

 自由研究から始まった調査が、常識を覆すことになった柴田くん。今後もカブトムシの研究を続けていきたいと話しています。

パンダのカムフラージュ能力は実はかなり高い!

 白と黒の毛が特徴的な、パンダ。動物園では、ひときわその姿が目立ちます。しかし、フィンランドの国際研究チームが、最新の画像解析技術を用いて調査したところ、実は、パンダの生息地ではその毛の色が「保護色として実際に役立つ」ということなんです。

 そこでパンダの生息地は、標高の高い山岳地帯であるため、それと似た環境で実験!実験する場所はスキー場。雪のなかでパンダは目立たなくなるのか?パンダの暮らす雪の林を再現しました。そして、肝心のパンダは、渡辺裕太さんがなりきりました。

 実験の映像を見てみると、やはり目立たなくなっていました。パンダの黒い部分は、木の幹や陰になった暗い背景などに、白い部分は、雪の積もる地表などに紛れていたんです!

 自然界の写真を見ても、確かに紛れていますよね。パンダの模様は、本当に目立たなかったんです!
 そして実は、一見派手な白と黒のコントラストの高い模様が、むしろカムフラージュ効果を生んでいるといいます。
 これは、「ディスラプティブカラーリング」というカムフラージュの方法。白い部分と黒い部分がくっきり分かれていることで体が分断され、全体の輪郭が分かりにくくなると考えられるんです。
 パンダ以外に、シマウマやバクの仲間なども、白と黒のコントラストにより体の輪郭を分かりにくくしている可能性があるんだそう。一見目立ちそうな模様でも、自然界ではカムフラージュになるという驚きのニュースでした。