現地レポート

11月1日 パチューカ最大の目標は「ラ・レバンチャ!」

2008.11.01

今年のパチューカの最大の目標は「ラ・レバンチャ!」去年のリベンジです。
初出場した去年は圧倒的にゲームを支配しながらもアフリカ代表のエトワール・サヘルに1対0で惜敗。選手達は直後のロッカールームで涙し「来年また必ずこの舞台に帰ってこよう」と固く誓い合ったそうです。思えばその瞬間からパチューカのリベンジへの挑戦が始まっていたのではないでしょうか。
そして今年4月、見事に北中米カリブCONCACAFチャンピオンズカップ連覇を果たし、2年連続でこの大会への出場権を獲得。舞台は整った。後は役者が揃えばリベンジは果たされる−。

偉大なチームには必ずといっていいほど偉大なGKが存在しています。
歴史を紐解けば、66年W杯を制したイングランドのゴードン・バンクスを筆頭に、イタリアのディノ・ゾフ。ドイツのゼップ・マイヤー。最近ではドイツW杯優勝イタリアのブッフォン。今年のユーロを制したスペインのカシージャス。
偉大なGKに共通する点はいくつもありますが、その中でもピッチ上での圧倒的な存在感とピッチ外でのリーダーシップと人間性。この二つは特に重要な要素を占めるような気がします。パチューカにもそんな「偉大なGK」と呼べる選手がいます。彼の名はミゲル・カレロ。2000年からパチューカに在籍し、チームの象徴と称されるカレロはコロンビア代表GKでもあります。

去年は、9月に左肩の血栓を除去する手術を受けたばかりで、この大会がリハビリから復帰した最初の試合となりました。もしカレロが万全だったら・・・パチューカサポーターの誰しもがそう感じたに違いありません。事実エトワール・サヘルに許したゴールはカレロの実力をもってすれば、いとも簡単に防げたシュートだったのです。

そのカレロに怪我の状態、チームコンディション、リベンジへの想いを聞くことは今回の取材の大きなテーマでもありました。

10月30日。練習を終えたカレロにインタビューしようと準備していた時の事です。ちょうどその日はパチューカのクラブ理念でもある社会貢献の一環として、街の子供たち20人ほどが練習見学に来ていました。その子供たちがカレロを発見した瞬間、一斉に「カレロ!カレロ!」の大合唱が始まりました。

  

一人一人丁寧にサインするカレロは地元の子供たちにとってのスーパースター!改めてカレロの人気を肌で感じ、胸を躍らせながらインタビューを待ちました。

189cmの大きな身体を少しかがめながらカレロがインタビュールームへ。目に力がある。真近に見るカレロは想像以上に大きい。そして顔が小さい!空気がピーンと張りつめました。いつもは女の子のお尻ばかり追いかけているお調子者のカメラマン・イスマイル、お腹が減ると機嫌が悪くなる音声のウーゴも何かいつもと様子が違います。
前日、頼んでもいないのに朝食にバッタの盛り合わせが出てきて困惑していた敏腕ディレクター永井さんも少し表情が硬い。そして通訳をして下さった相原さんの声のトーンもいつもより少し高い気がしました。

「オラ!ムーチャス・グラシアス!」

張りつめた空気はしばらくするとカレロの誠実な人柄と、時折まぜるユーモアによって次第に和み始め、その場にいるすべての人が惹きこまれていったように思いました。

カレロの言葉には目と同じ「力強さ」がありました。気になる左肩の状態も万全だとはっきり言い切りました。今年のチームの状態、パチューカが受け継いできた伝統、GKにとって大事な要素、去年日本からの帰国途中に体調を崩し、その後亡くなった名物サポーター・フルータスさんへの想い・・・。

45分もの長いインタビューに丁寧にこたえてくれたカレロの姿にリベンジへの揺るぎない自信を感じました。

インタビューの締めくくりに日本語でいくつかコメントを頂きました。しっかり発音できるまで何度も確認し、少し照れながらも一生懸命私たちの難しい要求にも応えてくれるカレロ。インタビューから感じた人間性、人を惹きつける独特のオーラはピッチ外での「偉大なGK」を十分に感じさせるものでした。

そしてピッチの中で感じる「偉大なGK」・・・圧倒的な存在感。これに関しては申し分ないでしょう!11月1日にクルス・アスールとのリーグ戦を取材しました。

とにかく無駄な動きが一切ない。どんなピンチが訪れても何事もなかったようにシュートをブロックし、素早く味方にボールをフィードする。ひと仕事終えたあとは決まってソックスを膝上までたくしあげ、次のシュートに備える。一連の動作がとにかく「しなやか」。ピンチには味方を大声で鼓舞し、得点をあげれば両手を広げて静かに喜ぶ。カレロは「家族のような結束」を自らのクラブの誇りとするパチューカの長男のような存在でした。

12月、カレロのたたずまいをみていればパチューカの結束を感じることができるでしょう。舞台も役者も揃った。パチューカのリベンジはカレロの両腕にかかっている!!

(アナウンサー 田邊研一郎)