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柔らかい朝の陽が射し込み始めた時、熟睡する乙女を残し、有翼の青年は寝台から名残り惜しそうに立ち去ろうとしています。物語は古代末期のお伽噺、ルキアウス・アプレイウスによる『黄金の驢馬』から取られています。人間の娘プシュケは、ヴィーナスに妬まれるほどの美貌の持ち主でした。ヴィーナスはプシュケに誰かつまらない男を愛させようと、息子アモルを送り込みますが、思惑は外れて息子は彼女に恋してしまいます。アモルによって、神殿に運ばれたプシュケは、それから十分なもてなしを受けて暮らしはじめます。ところがアモルが現れるのは姿が闇に紛れる深夜のみ。満ち足りた毎日を過ごしながらも、疑心にさいなまれるプシュケは、アモルの姉たちにそそのかされて、ついにランプの灯でアモルの姿を確認します。瞬時の悦びとともに、しかし安楽の日々は儚くも終わりを告げてしまいます。ピコは第二帝政下にパリで活躍したアカデミスムを代表する画家であるとともに、19世紀中頃までフランスの宗教画において、重要な地位を占める画家でした。1813年に画家の登竜門であったローマ賞第2席に入賞したピコはローマに学んでいます。これは、その留学中に制作され、1819年のサロンで好評を博した作品です。舞台のような前景、個々のモチーフの緻密な描写、理想的な人体表現などすべて新古典主義の教えに忠実に仕上げられていますが、そこにはロココ美術にも通じる甘く優美な表現がつけくわえられています。
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【解説】 横浜美術館 学芸員 新畑泰秀 |
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