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「かがくの里ウナギプロジェクト」6年の長期実験で見えたウナギの生態とは?【2024/3/17 所さんの目がテン!】

2024.04.01 公開

今から10年前。長い間放置され荒れてしまった里山の再生を目指し始まった長期実験企画・かがくの里。菜園の水を確保するため湧き水を引きこんで作ったため池で始まったのがウナギプロジェクトです。3月17日(日)放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」では、このプロジェクトを通して知ることができたウナギの生態を紹介しました。

近年減少する天然ウナギの数

魚養殖の専門家・北里大学 海洋生命科学部 水族増殖学研究室 千葉洋明准教授監修の元始まったウナギプロジェクト。日本から2500km離れた西マリアナ海嶺の辺りで生まれるウナギは、成長しながら日本にやって来て、川を上り、池や沼で何年もかけて大きく育ちます。そして産卵に向かう準備ができると、オスもメスも川を下り再び海へ向かい、生まれ故郷の西マリアナ海嶺まで戻り、産卵します。

しかし近年、河川の環境の変化で生息場所が減り天然ウナギの数も大きく減少。絶滅危惧種に指定されるまでになりました。そのため現在市場に出回っている99%は日本にやって来たシラスウナギを河口付近で捕らえ、養殖場で大きく成長させた養殖されたウナギです。

ただ河口で採れるシラスウナギも激減しており、そんなウナギの危機的状況に千葉准教授はかがくの里のような自然に近い環境で育てることで、より詳しい生態が分かれば生息数を増やす糸口が見つかるのではないかと考えました。

まずは千葉准教授が大学で研究用に購入したウナギの稚魚を100匹、里の池に放ち、実験を開始。その後も毎年、池に放ちながらおよそ6年に渡りウナギの成長を観察してきました。

その中で知ることができたウナギの興味深い生態を振り返っていきます。

ウナギの興味深い生態4つ

まず1つ目は「ウナギのぼり」。稚魚を池にはなってから2週間後、池を見ていたかがくの里専任プレゼンター・阿部健一さんが「ウナギがのぼってます!」と発見。ウナギがシートをのぼろうとしていました。

この行動を千葉准教授に聞くと、「正の走流性」と教えてくれました。正の走流性とは水の流れに魚が反応し流れに逆らって泳ごうとする性質のこと。ウナギのぼりという言葉がある通りその能力は高く、栃木県の中禅寺湖にある高さ100m近い華厳の滝ものぼっていくといいます。

千葉准教授は「凹凸がある岩壁で、凹凸をうまく使って水の抵抗を避けながらのぼって行く」と解説。ウナギは滝の裏の岩壁を何日もかけてのぼっていくというのです。

滝の岸壁には水がない中で、なぜウナギがのぼっていけるのでしょうか?「普通はエラからほとんど水中の酸素を受け取って呼吸しているんですけど、非常時には皮膚呼吸で酸素を60%くらい取り入れているという報告もあります」と千葉准教授。

それを可能にしているのが、ウナギの皮膚を覆っている粘液です。ウナギは粘液で体を乾燥から守りながら皮膚呼吸で酸素を取り入れます。この能力のおかげで滝の裏側のような湿度の高い場所であれば長く生きていられるというのです。

ウナギのぼりは千葉准教授も目の当たりにしたのは初めてだったそう。

2つ目は「ウナギの寝床」。

池の中に、千葉准教授が自作した竹筒や塩ビ管などを寝床として入れていました。ウナギは、体を入れられる細長く狭い場所を居場所にする性質があります。寝床を観察のために引き上げると、中にはちゃんとウナギがいました。また、ウナギには泥や砂の中に潜る性質も。このように、体がどこかに接触しているのを好みます。

しかし、ウナギは細く狭い場所がないと寝ずに24時間動き続けてしまいます。千葉准教授はこの行動について「一生懸命運動しているのでそれだけエネルギーが必要、エサもたくさん食べる。これがいわゆる養殖のウナギの状態。この行動によってかえってエサをたくさん食べて、早く大きくなるように環境に適応したウナギです」と話します。天然ウナギは何年もかけて大きくなりますが、養殖ウナギはこうして半年から1年ほどで出荷サイズにまで成長するのです。

3つ目は「養殖ウナギに起きる不思議な現象」。成長する過程で性が決まるウナギですが、一般的な養殖場で育てるとなぜか9割がオスになってしまうといいます。

今回、かがくの里のような自然に近い環境で育ったウナギは天然と同じくメスになるものも出るのではないか?と、池に入れて5か月後にウナギを捕獲し調べることに。

そして大きく成長したウナギを捕獲。このウナギはメスになっていました。その後も数年にわたり調査を続けると、オス7匹・メス10匹という結果に。このことから自然に近い環境で育てた里のウナギは、天然ウナギと同じく、半分の割合でメスとなりました。

4つ目は「ウナギは何を食べる?」。

里の池のウナギは、放った後エサを与えず自然のまま育っています。いったい何を食べて大きくなっているのでしょうか?

千葉准教授は「食べるものによって体を構成している栄養素が変わってくるので、性の決定にも関与している」と推測。水中カメラを4台設置し、ウナギの捕食シーンの撮影を狙います。

水中カメラは巨大なウナギを捉えました。口をパクパクと動かし何かを食べている様子をみた千葉准教授は「甲殻類のプランクトン、ミジンコとか、大型の動物プランクトンを食べているのかもしれない」といいます。

実は池の隣の田んぼには、土の質をよくするためにたい肥を入れていました。調査のため池と田んぼそれぞれの土を採取し水を入れて置いておくと、水温が上がってくると大量のミジンコが発生。水を張る5月頃から田んぼの水温があがると植物プランクトンが増え、それをエサにするミジンコなどの動物プランクトンが増加。池と田んぼは地下のパイプで繋がっており田んぼの水が池に流れ込むようになっていることから、豊富に発生したプランクトンを餌にウナギが育ったと考えられるのです。

さらにミミズを捕食するウナギを確認。天然ウナギの主食はミミズなどですが、その天然ウナギと同じく、ミミズを食べている姿も見ることができました。

6年の長期実験で知ることができたウナギの生態。千葉准教授はこのプロジェクトが、新たな養殖の形を模索する上での大きな成果になったといいます。

銀化したウナギを放流

そして去年3月、プロジェクトに大きな展開がありました。

千葉准教授は「例年ですと、秋口に産卵のために川を降りて海に向かう個体が出現します。その時に銀化という現象が起きる」と、ウナギの銀化について解説。

銀化とは川で成長し海に下る魚に起こる現象で、体が銀色に変化するもの。ウナギも海に向かう準備ができると体の色が変化するといいます。

ウナギが銀化するのは、早ければオスは5年・メスは8年ほどが目安だそう。人工の池で飼育される一般的な養殖では、半年から1年ほどで出荷されほぼ銀化することはありません。千葉准教授によると、他の研究機関などでもウナギの稚魚から産卵に向かう準備ができた銀化ウナギになるまで一貫して観察した例は見当たらないといいます。

そのため、自然環境に近いこのため池でウナギが銀化するかどうかを見ることは、千葉准教授にとって最大の目標だったのです。

そこで去年6月、池に合計7つの仕掛けを入れ、池の底に沈んだ仕掛けに慣れてウナギが入るまでそのまま置いておくことに。

4か月後に筒を回収すると、大きなウナギの捕獲に成功。全長およそ48cmもあるこのウナギは銀化していることがわかりました。ウナギの場合、銀化すると、腹は銀色・背は黒色に変化します。

なぜ黒くなるかというと、「海に行くといろんな強敵が待ち構えていますよね。そこを生き延びるためには目立たないようにならなきゃいけないので、背景に同化して黒くしたほうが見つかりにくい、生きのびやすい」と千葉准教授は推測します。

こうして見事銀化した里のウナギは「産卵回遊に参加できるんじゃないかと。遅くとも12月初めくらいまでには川に放流してやったほうがいいんじゃないかと考えています」と、放流することに。

ウナギが川から海に下るのは9月から12月初旬。この時期に自然の河川に放流すれば産卵回遊に乗って海に向かう可能性があり、放流の時期を逃してしまうと、銀化は元に戻るといいます。

ウナギは冬になると水温の低下や餌の量が減るため冬眠します。時期が過ぎると、海に向かうのをやめ、銀ウナギから黄ウナギに戻ってしまうのです。そこで銀化ウナギを自然のサイクルに戻すため、12月にウナギを川に放すことに。

まずは放流するにあたって、病気を持っていないかを確認。病気になったウナギは、エラが鬱血したり、体に斑点が出来るといった症状が現れるといいます。そのような個体を河川に放流すると、生態系に悪影響を与えかねないため、病気にかかっていないか千葉准教授がチェックし、問題がないことが分かると、水産試験場に報告。漁協組合にも許可をいただき放流場所に向かいました。

放流場所は茨城県の河川で、河口からおよそ6km離れたこの辺りは海水と淡水が交りあう汽水域です。かがくの里専任プレゼンターの阿部さん、五島麻依子さんと里の達人・西野茂さんも立ち会います。

ここを選んだ理由を千葉准教授は「海に5~6km(の距離)でつながっている川。海の水が上がってくるから、海の水を感じてより早く海に下りてくれるんじゃないかな」と説明。ウナギが産卵のために海に下りていく上で最適な場所だといいます。

さらに「(この川岸には)いろんな構造物を置いてあります。そういうのがないと鳥に食べられる恐れがある。構造物があると魚達の隠れ家になるので安全に海に行ける確率が高い」ことも大切だといいます。

放流の前、まずは水温の違いや水質の違いでウナギが驚かないようウナギの入ったバケツに水を混ぜて慣らすことおよそ10分。

そして、見守り続けてきたウナギをついに放流する時が。その名残惜しさに記念写真も撮影。

さらに阿部さんと五島さんは記念すべき里のウナギ・第1号を盛大に見送ろうと手作りの応援旗を作り、無事に海に着くようにエール。

今後は数年後のメスのウナギの銀化に期待しながら、観察を続けていきます。

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