あえて公表 コロナ元感染者が伝えたいこと
新型コロナウイルスに感染していたことを公表した人たちがいます。公表後は、一部で誹謗中傷があった一方、励ましの声も多かったといいます。なぜ感染を公表したのか、いま伝えたい思いとは――。
■感染を公表した飲食店
店長「お客さんの顔を見るのも幸せですし、生きてるってことが幸せ」
こう語るのは熊本県・熊本市の飲食店、馬料理二代目天國の店長で、元感染者の男性です。6月から、店から感染者が出たことを公表した上で営業再開しています。
異変は今年3月でした。
店長「3月26日ですね。 熱が上がってきて普通の関節痛じゃなかった。すごく腰も関節も全部痛かったんですね。『もしかしたら』というのは頭をよぎりました。ポンカンをむいたときに、においがしなかったんですよ。食べても味しなかったんですよね」
入院し、感染が分かった後も症状は悪化。集中治療室に移った際は“死を覚悟した”といいます。
そのとき、家族に送ったLINEには…。
店長「皆と出会えて本当に幸せでした」。
妻「大丈夫!絶対治る!」
娘「うん大丈夫!治るよ」
店長「まけんバイ」
自身や両親が経営する2つの店舗で、妻と母親、従業員も感染しましたが、すでに全員退院。
徹底した消毒や感染対策をとり再び店を開けました。
葛藤しながらも、店名公表に踏み切った理由を店長はこう話します。
店長「みんなで家族会議した結果、お客さんのことを思うんだったら、感染拡大防止のために早く公表して、保健所に行って、接触者と思われる方に連絡したほうが絶対いいということで」
家族の後押しもあっての決断には、大きな反響があったといいます。
店長「公表してから本店のほうに電話がひっきりなしにかかってきてですね、24時間鳴りっぱなしで」
誹謗中傷が一部あったものの、8割は励ましの言葉でした。
店長の母親 「常連さんとか知り合いの人とか、お花を持ってきてくれたりね。うれしかったですね」
さらに、県内の学校からは人権の授業で紹介させてほしいとの依頼が。子供たちにあてたビデオレター、そして自分の体験したことを先生に伝えたといいます。
体験を聞いた子供たちからの手紙には…。
「僕は応援しています。がんばってください!」 「今までで一番自分のこととして考えられた」
などといった反応があったといいます。
今、伝えたいことはー
店長「気持ち的にちょっと
■実名を公表した電器店
そして、北海道北見市で電器店を経営する奥村光正さん(67)も感染を公表した一人です。
奥村さん「ちょっとコロナくさいぞということは、入院する前からある程度のお客さんは分かっていたんですよね。もう隠し通せるものでもないし」
道内74例目となった奥村さんは、クラスターが発生した展示会で感染。まだ世の中で3密回避が呼びかけられる前のことでした。
退院後、奥村さんは感染のことを記載した自作のチラシを近所に配りました。
多くの励ましの声が寄せられた一方、心ない言葉も。 チラシの中には「治りました身体元気でもとどおり」とありましたが…
奥村さん 「退院してすぐお客さんから電話かかってきて『来なくていいから』と。つらいですよね。ただひたすら我慢なんですよね。何にも反論できないんですよ」
実名を公表した今、思うことは。
奥村さん 「退院してきた人には本当に、自分たちの不安より、大きい不安を乗り越えてきたんだなという気持ちをもっていただきたいですよね」
(6月24日放送「news zero」より)
【関連記事】