ルノワール+ルノワール展
画家の父、映画監督の息子、2人の巨匠が日本初共演
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肖像画、なかでも家族の肖像画はピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)が特に好んだ主題でした。ルノワールの描いた幾百もの絵画には、妻アリーヌ・シャリゴ(1859-1915)や、それにもまして彼女との間にもうけた3人の子供たち、すなわち俳優ピエール(1885-1952)、映画監督ジャン(1894-1979)、そしてココという愛称で呼ばれた陶芸家クロード(1901-1969)が何度も登場します。ジャンは生涯を通じて父の作品に思いを巡らせ、それらの影響を深く受けています。画家の父と同じように、映画監督として、ジャンは自らの作品と家族を結び付けています。それは時として、父が彼をモデルにして描いた肖像画に対する敬意(オマージュ)を表す意味合いもありました。
主な作品
《自画像》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1879年 オルセー美術館 © Photo RMN/J. G. Berizzi/distributed by DNPAC |
《狩姿のジャン》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1910年 ロサンゼルス・カウンティ美術館 © 2006 Museum Associates/LACMA |
『ゲームの規則』 ジャン・ルノワール 1939年 Les Grands Films Classiques © Ministre de la Culture - Mdiathque du Patrimoine/Sam Lvin/dist.RMN |
画家ルノワールとその息子ジャンにとって、創造への情熱の中核をなしていたのは女性でした。ルノワールは、その画業の初期においては特に、女性を伝統に従って全身、あるいは上半身の肖像画として描きました。また、より斬新で革新的な手法を用いて女性がくつろいでいるところを描いたり、神話や宗教に拠らずに感性豊かな裸婦像を表現しました。
そして、ルノワールの一連の「スペイン風絵画」においては、舞台芸術がインスピレーションの源となっています。ジャンもまた、エキゾティズム(異国趣味)に興味を持ち、民俗衣裳やコメディア・デラルテ(イタリア起源の仮面劇)に由来する衣裳などは、独自性のある彼の作品の出発点となりました。
主な作品
《コロナ・ロマノ、バラの若い女》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1913年 オルセー美術館 © Photo RMN/J. G. Berizzi/digital file by DNPAC |
《闘牛士姿のアンブロワーズ・ヴォラール》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1917年 |
『黄金の馬車』 ジャン・ルノワール 1952年 © BetaFilm GmbH |
画家ルノワールは人物表現の研究をするなかで、印象主義の原理を適用しようと試みました。そのためにルノワールは色彩を変化させ、光を浴びたモデルの肌に、薄いバラ色から紫色を帯びたバラ色まで、さまざまな色合いの影をちりばめました。ジャンは、自らの作品のなかで、女性の上半身を背後から捉え、父の描いたモデルのように自然と一体化した調和の中においています。水の流れ、陽光が肌に落とす光の斑点、広がる水面に映し出された反映や、光を透過する木々の葉の効果、そしてふたりの芸術家が強い創造意欲をかき立てられたであろうモデルの官能性は、親から子へと受け継がれた芸術性を表しています。
主な作品
《陽光のなかの裸婦(試作、裸婦・光の効果)》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1875-76年頃 オルセー美術館 © Photo RMN/H. Lewandowski/digital file by DNPAC |
『草の上の昼食』 |
画家ルノワールの最も有名な絵画のなかで、19世紀の社会で重視されていた余暇の楽しみや娯楽を描いたいくつかの作品は、モンマルトルのコルト通りにあったアトリエで制作されました。都会や田園地方の舞踏会、オペラや劇場などは、ルノワールの関心を惹きつけた主題でした。こうしたテーマは、ジャンの作品にも見出されます。ジャンは、父が生きたモンマルトルを非常に忠実に再現しています。ジャンの作品に見られる、人生に訪れる束の間の甘美を享受したいという強い欲望や、色彩、群衆、ある種の熱を帯びた動き、自然光や人工光の扱いなど、あらゆる嗜好は、画家ルノワールのダンスを描いた諸場面を思い起こさせます。
主な作品
《ぶらんこ》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1876年 オルセー美術館 © Photo RMN/H. Lewandowski/digital file by DNPAC |
《田舎のダンス》 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1882-83年 オルセー美術館 © Photo RMN/H. Lewandowski/digital file by DNPAC |
『ピクニック』 ジャン・ルノワール 1952年 Paris, Collection Cinmathque franaise, fonds Femis; D.R. |
章解説(抄訳):オルセー美術館 カロリーヌ・マチュー/マリアンヌ・マチュー