ラグビーW杯 日本代表vsチリ代表の舞台・トゥールーズはラグビー熱の高い街【“日本ラグビー界の鉄人”大野均さんと巡る現地取材記】
ラグビーワールドカップ2023フランスが9月8日(現地時間)に開幕しました。開幕を前に、開催地フランスを旅したのは“日本ラグビー界の鉄人”元日本代表の大野均さん(現在は東芝ブレイブルーパス東京・普及担当)です。
大野さんとともにフランスを巡り取材を共にしてきたスタッフが、現地での模様をお届けします。6日目の様子をご紹介。
■6日目
この日は宿泊したホテルの案内から始まった。
宿泊したのは、トゥールーズの象徴キャピタル広場の目の前にある4つ星ホテル、ル・グラン・ホテル・ド・ロペラ。元々は寄宿学校として使われ、その後劇場に転用されるが、1909年にホテルとして使用されるようになったんだそう。
内装は、バラ色の街と呼ばれるトゥールーズカラーのローズを基調としたモダンな作りで、海外を感じられる雰囲気。
今回は特別にスイートルームに案内してもらう。私が泊まった部屋と内装に大きな違いはないが、窓の外にはキャピタル広場が見えるのだ。
ここトゥールーズは、ラグビー熱が高い。というのも、地元のラグビーチーム「スタッド・トゥールーザン」はフランス1部リーグ「トップ14」で最多優勝を誇る。優勝した際にはキャピタル広場で盛大にパレードが行われ、ラグビー好きにはたまらない立地のホテル。
そんなラグビー熱の高いトゥールーズで、日本代表は9月10日にチリ戦を戦い、9月29日にもサモア戦が行われる。ホテル内を案内してくれた支配人アシスタントのべラーヌ・フェネシュさんに(取材時)日本人の予約が入っているのか聞いてみると、どうやら入っているらしい。「普段は日本人の予約はあまり入らないが、試合のある日は日本人の予約がたくさん入っています。いい思い出になるようにしっかりおもてなしさせてもらいます」と語っていた。まだ日本戦日の予約はあいているのか質問すると、この取材時ではあと2,3部屋あいているようだ(現在はあいていない可能性があるが)。他の試合の日は、もう少し空きがあるのでW杯観戦に来るなら是非!とのことなので、フランスに訪れる予定のある人は候補に入れてみたらいかがだろうか。
ホテルの見学を終え、部屋から見えたキャピタル広場へ。
広場には、市庁舎(キャピタル)のほか、レストランやカフェが並びたくさんの人がゆっくりとした時間を過ごしていた。
その後少しだけキャピタル広場にある市庁舎を見学し、街中へ。
街中には、地元ラグビーチーム「スタッド・トゥールーザン」の店やラグビーW杯のカウントダウンボードや案内所の設置もされ、W杯へ準備が進められている。
街の台所であるビクトル・ユゴー・マルシェに向かう。
出迎えてくれたのは、トゥールーズ副市長 兼 トゥールーズ都市圏の副議長を務めるジャンクロード・ダルドレさん。
観光面が担当のダルドレさんは、日本のようなおもてなしを画策しているという。
「フランス最大の4万人収容できるファンゾーンを作る予定だ。他にも選手が食べる食事を街中でも食べられるような内容も考えている」
また、街の人たちからは「トゥールーズはみんな日本に注目しているよ。フランスと日本が決勝で戦うことを楽しみにしている」と日本へのエールもたくさん聞こえてきた。
そんなラグビー熱のあるトゥールーズでは、毎年秋(9月)の数日間にウオーターラグビーの大会が行われている。
今年はW杯の都合で前倒しになり、訪れたこの日が大会の最終日。
しかも、大野さんの参加が急遽決まり日本人初!?参戦なのだ。
大会にはアマチュア選手だけでなく、現役時代各国の代表をしていた選手たちも参加するというではないか。
初めてみるウオーターラグビーの試合。ところで、ウオーターラグビーってどうやってやるんだろう?と思い大野さんに聞いてみると「川の上でラグビーをするんですよ。そして川に飛び込むんです(笑)」わかるようで・・・わからない。
ウオーターラグビーは、トゥールーズにあるガロンヌ川の上に長さ45m・幅35mの特設ピッチが浮かんでいて、ここでラグビーを行うのだ。
ピッチには、タッチラインやゴールラインが存在せず、ゴールポストの後ろにインゴールもない。点を入れるためには、川に飛び込むしかないというのだ。
会場につくと、たくさんの人で埋め尽くされ盛り上がりをみせていた。
会場内を移動していると、目の前から大柄な男性が。大野さんを見ると、こちらに近づき「今日はお互い頑張ろう!」と声をかける。
実はこの男性、元フランス代表のファビアン・プロースさん。
代表キャップ数118、キャプテン数42のフランスラグビー界のレジェンド。
本人を目の当たりにして大野さんは、「年代が違うので直接見るのは初めてだけれど、いま見てもオーラが違う、分厚い!」「機会があれば試合してみたいですね」と興奮気味に語った。
控え室に向かうと、試合に出場する選手たちがユニホームに着替え、くつろいでいる。大野さんもユニホームに着替え、ストレッチをして準備を整える。
「ユニホームを着るのは引退して以来なので、3年ぶりくらいなんですよ」と話し、少し恥ずかしそうにしている。
今日の目標を聞くと、「まわりに迷惑をかけないこと」と控えめな目標を語り試合へ向かった。
大野さんが参加するチームは各国の元代表が名を連ねる「世界選抜チーム」。相手は、「スタッド・トゥールーザンOBチーム」。
なんと、先ほど会ったファビアン・プロースと試合する場が巡ってきたのだ。
試合は激しく攻守が入れ替わる一進一退で始まるも、徐々に相手チームがトライを重ね、前半はリードを許してしまう。
後半になると、タックルの名手として名を馳せた元フランス代表のセルジュ・ベッツェンさんがチームを鼓舞し、相手チームに食らいついていく。
ギリギリまで健闘するも、一歩及ばず試合終了。
試合後、大野さんは「初めてのメンバーだが、ラグビーをやるとすぐに1つのチームになれる。久しぶりに実感できてすごくいい時間だった」と満足そうに語っていた。
表彰式が始まると・・・なぜか世界選抜チームが歓喜し、なにかを受け取っている。
試合は負けたはずですよね?と取材陣で話していると、「どうやら大野さんのチームが優勝したようです」と観光局の人が教えてくれた。
戻ってきた大野さんに聞いてみると、「最後に点を取ったから勝ちみたいな(笑)」
理由はわからないが、どうやら優勝したようだ。これは、私の勝手な解釈だが、どこのチームよりも楽しそうに盛り上がっていたので、きっと1番楽しんでいたチームが優勝だったのだろう。ちなみに、この結果に文句が出るはずもなく、会場全体が祝福してくれていた。この適当加減がお祭りぽくもあり、楽しいのかもしれない。
<協力>
・フランス観光開発機構
・オクシタニー地方観光局
・トゥールーズ観光局
・東芝ブレイブルーパス東京