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  • ドウスル?

東日本大震災から13年・・・娘を捜し続ける父親の“後悔”

2024.03.11

○櫻井
「きょうはよろしくお願いします」

木村紀夫さん58歳。
あの日、
ここ福島県大熊町に住んでいました。

自宅があったのは、線量が高く、
いまも立ち入りが制限されている
帰還困難区域の中。
そのため…。

○櫻井
「コーンがあって、警備の方が立っています」
○震災時、大熊町に住んでいた
 木村紀夫さん(58)
「ここでチェックしてから入ります」

許可なしに入ることはできません。

○震災時、大熊町に住んでいた
 木村紀夫さん(58)
 「行きます」
○櫻井
 「帰還困難区域の中ですね」

見えてきたのは…。

○震災時、大熊町に住んでいた
  木村紀夫さん(58)
「正面に、東京電力(福島第一原発)の
   排気筒が見えてきました」
○櫻井
「本当だ」

福島第一原発がある大熊町。

自宅を案内してもらうと。

○震災時、大熊町に住んでいた
  木村紀夫さん(58)
「ここに私の自宅があった。
   ここが玄関だった。引き戸で」

海から100メートルほどの
距離にあった家は…

津波で流されました。

自宅の裏山に建てられていたのは、慰霊碑。

○櫻井
「こちらの慰霊碑は?」
○震災時、大熊町に住んでいた
   木村紀夫さん(58)
「3人のための慰霊碑です」

津波にのまれた
木村さんの父・王太朗さんと
妻・深雪さんは
およそ1か月後、遺体で見つかりました。
ただ…。

○震災で家族3人を亡くした
   木村紀夫さん(58)
「二女の汐凪が見つからない」

小学校1年生だった汐凪ちゃん。

○震災で家族3人を亡くした
   木村紀夫さん(58)
「一晩捜して歩くが見つからない。
 次の日には、
   原発事故が危ないってことで
 全町避難になってしまって
   捜索自体ができない」

県外に避難したあとも、
被ばくの危険にさらされながら
木村さんは、何年も何年も
汐凪ちゃんを捜し続けました。

○震災で家族3人を亡くした
   木村紀夫さん(58)
「砂浜に打ち上げられている
 ガレキをかいてみたり、
 波消しブロックの間を見てみたり。
 そういう捜索をしたけど、
   結果は出ない。
 何やってるのかな、自分はって」

その後、ボランティアや
重機が入っての捜索が行われ
震災から5年9か月。

○震災で家族3人を亡くした
  木村紀夫さん(58)
「あのあたりで見つかった。
   彼女のマフラーが見つかって
   その中から
   首の骨のひとかけらが落ちたのが
   最初の発見でした」

そして2年前には…。

○支援者
「お父さんが掘り出すからな。
 大たい骨。見つかった」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「もっとここ捜せば、
 出てくるかもしれない」

汐凪ちゃんの太ももの骨が
発見されました。
ただ、見つかることで
わき上がる複雑な思いも…。

○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「彼女が津波で犠牲になったのか
 ここに置き去りにされたことで
 亡くなったのか、わからなくなった」
○櫻井
「そのまま捜索が続けられていたら…と、
 見つかったことで突きつけられた?」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「そういう状況を生んでしまったのは
 明らかに
 原発事故(が原因)だと言える」

いま語り部として活動している木村さん。
そのときに案内しているのが
汐凪ちゃんが地震の直前まで
過ごしていた小学校です。

○櫻井
「教室は当時のままですか?」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「そうなんですよ」

あの日から、時が止まった教室。

○櫻井
「あれ汐凪ちゃんの席ですか?」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「『こびとづかん』という絵本を
 最後読んでいたんだなって。
 当時の汐凪の様子が見えてくる」

木村さんは、この場所だから、
伝えられることがあるといいます。

○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「原発事故によって、この教室がいまだに
 こういう状況で残っているのは
 ここだけの問題ではなくて
 電気を使っている
 皆さんの問題でもある。
 良いとか悪いとかではなくて
 自分たちは、
 どういう社会をつくっていくのか
 1つの提案ができる場所」
○櫻井
「考える・議論するきっかけを
 つくれるような場所」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
 「そうですね」

年間120回にもおよぶ語り部活動。
突き動かすのは、ある“後悔”でした。

○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「過去に犠牲者を出した津波は
 福島にも(津波が)あがっている。
 自分たちは知らなかった。
 それを知っていたら、家族に
 『地震が来たら、家に戻っちゃいけない』と
 話ができていたと思う。
 それができていなかったことが一番後悔」

ことし元日。
いまだ8割が見つかっていない
汐凪ちゃんの遺骨を捜していた時には…。

♪「緊急地震速報アラーム」
○ボランティア
「地震?」

能登半島地震が発生。
いつ起きてもおかしくない大災害。

木村さんが目指すのは、
誰も犠牲にしない防災です。

○櫻井
「知る、共有する、
 それをもとに、とにかく逃げる」
○震災で家族3人を亡くした
 木村紀夫さん(58)
「100%命を守る答えは出ないけど
 それに向かってできることはある」

 

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