東日本大震災から13年・・・娘を捜し続ける父親の“後悔”
○櫻井
「きょうはよろしくお願いします」
木村紀夫さん58歳。
あの日、
ここ福島県大熊町に住んでいました。
自宅があったのは、線量が高く、
いまも立ち入りが制限されている
帰還困難区域の中。
そのため…。
○櫻井
「コーンがあって、警備の方が立っています」
○震災時、大熊町に住んでいた
木村紀夫さん(58)
「ここでチェックしてから入ります」
許可なしに入ることはできません。
○震災時、大熊町に住んでいた
木村紀夫さん(58)
「行きます」
○櫻井
「帰還困難区域の中ですね」
見えてきたのは…。
○震災時、大熊町に住んでいた
木村紀夫さん(58)
「正面に、東京電力(福島第一原発)の
排気筒が見えてきました」
○櫻井
「本当だ」
福島第一原発がある大熊町。
自宅を案内してもらうと。
○震災時、大熊町に住んでいた
木村紀夫さん(58)
「ここに私の自宅があった。
ここが玄関だった。引き戸で」
海から100メートルほどの
距離にあった家は…
津波で流されました。
自宅の裏山に建てられていたのは、慰霊碑。
○櫻井
「こちらの慰霊碑は?」
○震災時、大熊町に住んでいた
木村紀夫さん(58)
「3人のための慰霊碑です」
津波にのまれた
木村さんの父・王太朗さんと
妻・深雪さんは
およそ1か月後、遺体で見つかりました。
ただ…。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「二女の汐凪が見つからない」
小学校1年生だった汐凪ちゃん。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「一晩捜して歩くが見つからない。
次の日には、
原発事故が危ないってことで
全町避難になってしまって
捜索自体ができない」
県外に避難したあとも、
被ばくの危険にさらされながら
木村さんは、何年も何年も
汐凪ちゃんを捜し続けました。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「砂浜に打ち上げられている
ガレキをかいてみたり、
波消しブロックの間を見てみたり。
そういう捜索をしたけど、
結果は出ない。
何やってるのかな、自分はって」
その後、ボランティアや
重機が入っての捜索が行われ
震災から5年9か月。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「あのあたりで見つかった。
彼女のマフラーが見つかって
その中から
首の骨のひとかけらが落ちたのが
最初の発見でした」
そして2年前には…。
○支援者
「お父さんが掘り出すからな。
大たい骨。見つかった」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「もっとここ捜せば、
出てくるかもしれない」
汐凪ちゃんの太ももの骨が
発見されました。
ただ、見つかることで
わき上がる複雑な思いも…。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「彼女が津波で犠牲になったのか
ここに置き去りにされたことで
亡くなったのか、わからなくなった」
○櫻井
「そのまま捜索が続けられていたら…と、
見つかったことで突きつけられた?」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「そういう状況を生んでしまったのは
明らかに
原発事故(が原因)だと言える」
いま語り部として活動している木村さん。
そのときに案内しているのが
汐凪ちゃんが地震の直前まで
過ごしていた小学校です。
○櫻井
「教室は当時のままですか?」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「そうなんですよ」
あの日から、時が止まった教室。
○櫻井
「あれ汐凪ちゃんの席ですか?」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「『こびとづかん』という絵本を
最後読んでいたんだなって。
当時の汐凪の様子が見えてくる」
木村さんは、この場所だから、
伝えられることがあるといいます。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「原発事故によって、この教室がいまだに
こういう状況で残っているのは
ここだけの問題ではなくて
電気を使っている
皆さんの問題でもある。
良いとか悪いとかではなくて
自分たちは、
どういう社会をつくっていくのか
1つの提案ができる場所」
○櫻井
「考える・議論するきっかけを
つくれるような場所」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「そうですね」
年間120回にもおよぶ語り部活動。
突き動かすのは、ある“後悔”でした。
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「過去に犠牲者を出した津波は
福島にも(津波が)あがっている。
自分たちは知らなかった。
それを知っていたら、家族に
『地震が来たら、家に戻っちゃいけない』と
話ができていたと思う。
それができていなかったことが一番後悔」
ことし元日。
いまだ8割が見つかっていない
汐凪ちゃんの遺骨を捜していた時には…。
♪「緊急地震速報アラーム」
○ボランティア
「地震?」
能登半島地震が発生。
いつ起きてもおかしくない大災害。
木村さんが目指すのは、
誰も犠牲にしない防災です。
○櫻井
「知る、共有する、
それをもとに、とにかく逃げる」
○震災で家族3人を亡くした
木村紀夫さん(58)
「100%命を守る答えは出ないけど
それに向かってできることはある」