“折り紙工学” 折り紙の原理はどのようにものづくりに生かされる?【2024/11/24 所さんの目がテン!】
紙を折るだけでさまざまな形をつくりだす折り紙。そして、折り紙の原理や技術を工学に応用し、様々な分野で役立てていこうという学問が折り紙工学です。
例えば地図の場合、対角線に引っ張ることで瞬時に開いたり閉じたりできる折り紙の技術が採用されています。また、宇宙観測装置・スターシェードは折り紙の技法を応用し開発されたもの。打ち上げの時にはコンパクトに折りたため、宇宙で大きく広がり観測のため光を遮ります。
11月24日(日)日本テレビ「所さんの目がテン!」では、広がり続ける折り紙工学の可能性を特集しました。
折り紙工学の視点で見た昆虫の羽
Tokyo Bug Boysの平井文彦さんときょうきょうこと湯上響花は、生き物の仕組みを折り紙工学に応用している九州大学 大学院 芸術工学研究院 斉藤一哉准教授を訪れました。
見せてくれたのはハニカム構造の板。ハニカム構造とは、蜂の巣のような六角形が並んだ構造。軽量かつ高強度の板を作ることができます。
従来は、複数の板を接着させるため平板パネルのみ作ることができたのですが、斉藤先生は、一枚の波型の金属板を折り曲げていくことでハニカム構造を作る技術を開発しました。これによって様々な構造のハニカム構造を作れるようになったのです。
平井さんと斉藤先生は昆虫をきっかけに交流を深めてきたそうで、お二人に、昆虫の羽について折り紙工学の視点から語っていただきました。
まず平井さんが見せてくれたのは、テントウムシが飛ぶ瞬間の映像。鞘羽が開いて、下から折りたたんだ後羽が展開して飛んでいきます。
鞘羽とはテントウムシなど甲虫の体の外側にある固い羽のことで、飛ぶときは鞘羽をパカっと開き、中に折りたたまれていた後羽を開きます。
カブトムシも後羽を鞘羽の中に畳んで収めていますが、カブトムシは基本的には根元に筋肉が集まっているので、そこを動かすことで真ん中の両方の羽が伸びる仕組みになっています。根元を動かすだけで羽が開くこの仕掛けを何かに応用できないか、研究が進められているそうです。
続いて平井さんが紹介するのはハナムグリ。ハナムグリは鞘羽を開かずに、スライドさせるように後羽を出すことができます。一瞬で羽を開き飛び始めることができるのです。
鞘羽の開き方はバリエーションが豊富。斉藤先生はルリエンマムシの鞘羽を例に挙げ「車メーカーの人に、鞘羽を研究して開き方とか車のドアに応用したら?ってすごく言うんです」といいます。
そんな斉藤先生イチオシの昆虫の羽のたたみ方は、ハサミムシのもの。平井さんが撮影したハサミムシの映像を見ると、小さい鞘羽の中から後羽が約15倍の大きさまで広がっています。ハサミムシは、一瞬で広げたりしまったりできる、昆虫界でも一番の収納効率がある羽を持っています。
ハサミムシには複雑で美しい折り目のパターンがあり、この折り目によりコンパクトな収納ができるといいます。
そして斉藤先生は、ハサミムシの複雑な折り畳みパターンが、実は極めてシンプルな幾何学的なルールで作図できることを発見しました。
このルールで設計した扇子を先生と一緒に作ってみました。折りたたむ時、普通の扇子は蛇腹に折りたたむだけですが、この扇子はちょうど真ん中の部分で二つ折りに折りたたむことができます。綺麗に半分におれ、胸ポケットにも収納が可能なコンパクトさに。
半分に折ることが出来るのはなぜなのでしょうか?普通の扇子の場合、全部のフレームが1点で交わるように重なっています。この状態で半分に折った時、紙の厚みが邪魔をし綺麗に折れません。
一方ハサミムシの扇子は、フレームの根本がずれています。
ハサミムシの羽も根元がずれています。この構造で半分に折った時、紙と紙の間に隙間ができ、厚みが重ならず、スリムに折りたたむことができるのです。
「(昆虫の)エッセンスを取り出して工学に使ってあげるというのが、バイオミメティクスの面白いところですね」と斉藤先生。バイオミメティクスとは、「生物模倣」と呼ばれ、生き物の動きや構造を工学などに応用するというもの。
斉藤先生は「折り紙の幾何学を使って展開図設計法の部分を明らかにしたことで、人間の使いたいものに合わせてハサミムシの扇子をカスタマイズできるようになった。それによっていろんな用途、スケール、目的で、この折りたたみが使えるようになりました」と解説します。
この技術は、軽トラックに積める折りたたみ式の屋根としても実用化。そのほかにも月面基地での滞在時に必要な電力を得るためのコンパクトに折りたたみ可能な太陽電池パネルの開発も進められています。
今回スタジオには、斉藤先生からお借りした、実際に月面基地の電力タワーの太陽電池パネルに採用が検討されているモデルが登場。
ハサミムシの羽は、一瞬で開き折り畳む柔軟性がある一方羽ばたきにもしっかりと耐えられる強さも持っています。この太陽電池パネルも、収納時のコンパクトさと展開時の頑丈さの両方を併せ持つのが特徴です。
平面だったシートが立体的な形に折れ曲がる仕組み
続いては、折り紙をめぐる新技術を調べていきます。10月に科学技術館で行われた「CONNECTING ARTIFACTS つながるかたち展04」では、折り紙工学が応用された様々な作品が並んでいました。
その中でも一際目立っていたのが、折り紙で作ったという「三次元ウサギ」。曲線が多く立体的なウサギを、1枚の大きな紙を折るだけで作り上げています。
この折り紙を作ったのは、東京大学 大学院工学系研究科 舘知宏教授。舘先生は、どんな立体的な形でも1枚の紙から折れる理論を世界で初めて構築。そしてその理論を元に、オリガマイザーというソフトをつくりました。
オリガマイザーは、3次元の形状のものを入力すると、それを折り紙で折れる2次元の展開図を自動で作ってくれるソフトです。
しかし形状が複雑だと、もちろん展開図も細かくなっていきます。また、展開図には、折る手順までは書かれていません。
実際に舘先生が三次元ウサギを折った時の映像では、完成までかかった時間はなんと10時間。長時間かけてようやく完成できる代物です。
ですが、この問題を解決できる最新技術があると聞き、続いて慶應義塾大学 理工学部の鳴海紘也准教授を訪れました。
鳴海先生は一枚の黒いシートを見せてくれ、「温めるだけで、自動で折る技術を開発しました」といいます。鳴海先生が開発した平面のシートには薄く、折り紙の折れ線のような模様があります。
そこにお湯をかけると平面だったシートが立体的な形に折れ曲がりました。
平面のシートが一瞬で立体的に折れていく、どのような仕組みでこのようなことが出来るのでしょうか?
このシートは、熱で収縮するフィルムの上に印刷により熱で縮まない加工をしたもの。
黒い部分は印刷された部分、溝は印刷がないところになります。70度~100度に温まると、印刷がされていない部分だけシートが収縮します。それによって、シートが自動的に折れ曲がる仕組みです。印刷のパターンを変えることで、様々な形に折ることができるのです。
別のシートを徐々にお湯につけていくと、帽子の形になりました。これを手で折るとしたら10時間はかかるそうです。
鳴海先生は「帽子の頭のところはほとんど平らじゃないですか。そういうところは折り線がすごく細いんです。0.1mmぐらいですね。端っこはぎゅっと丸まってくれないといけないのでその分線が太くて、ここが大体1mmぐらいですかね」と、溝の太さは縁の部分が太く、中心は細く設計されています。溝の太さを変えることで折り曲げる角度を変えることができ、全て計算で一枚のシートから望み通りの形を折ることができます。
鳴海先生には「ロケットはものを入れられるスペースがほとんどないんです。なので紙束みたいにして運んで、宇宙で立体にして使うようなことが考えられます」と教えてくれました。
折り紙を自動で折る研究はこれまでにもありましたが、鳴海先生の開発した技術では8万個以上の面を自動で折ることができ、従来の1200倍以上の細かい物が作れるようになったといいます。折り紙工学の技術革新には、今後も注目です。