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「特攻隊との5日間」沖縄戦76年…女学生の記憶

2021.06.21

沖縄県北部の古宇利島。
水深40メートルを超える海底。
地元ダイバーの杉浦武さんが
撮影したのは、アメリカ軍の駆逐艦『エモンズ』です。
太平洋戦争末期に繰り返し行われた“特攻”。
エモンズは5機に突入され、その後、沈みました。



76年が経った今年、
船体の一部は大きく崩れ始めていました。
その、すぐそばに残っていたのは…
“特攻機のエンジン”です。


さらに、特攻隊員が握っていたとみられる“操縦かん”も。
この海で命を落としたのは、特攻部隊『誠隊』の隊員たち。
全員が、20代の若者
でした。



特攻が死を意味すると知りながら、
どんな思いで飛び立ったのか。
出撃前の時間を共に過ごした女学生がいます。
群馬県の工場で飛行機の部品を作っていた
三上登喜子さん、当時15歳。現在、91歳です。



誠隊を直接知る方が少なくなる中、
電話でならと当時のことを語ってくださいました。

◯櫻井
 「はじめまして。
  本日はお時間をいただきありがとうございます」

◯出撃前に誠隊と交流・三上登喜子さん(91)
 「こちらこそ、お世話になります」

◯櫻井
 「誠飛行隊とのつながりは
  どういったところから始まった?」

◯出撃前に誠隊と交流/三上登喜子さん(91)
 「私たち飛行機なんて見たこともなかったものですから、
  お友達と(近くの)飛行場に行ってみたんです
  そのときに初めて森さんっていう方が
  『飛行機の説明をしてあげようか』って突然、
  後ろから声をかけてくださったのが
  そもそもの始まりなんです。」

優しく声をかけてくれたのは、
25歳の森知澄(もり・ともすみ)少尉でした。  

 

 

◯出撃前に誠隊と交流・三上登喜子さん(91)
 「私の苗字(旧姓)が“静”っていうんですけど
  あるとき森さんが『しずちゃん』って
  私のことを呼んだんです。
  妹さんの写真を見せてくださって、
  妹さんが“静代さん”とおっしゃるんです。
  私たちをみてみんな妹のことを思ったと思うんです、
  家族のこと。」

◯櫻井
 「妹さんの姿を重ねていたのかもしれないという…」

◯出撃前に誠隊と交流・三上登喜子さん(91)
 「そう、思います。
  特攻隊の人ってみんな朗らかで、肩をぶつけ合って
  朗らかに笑って。そういうのをみていると
  私たちがしんみりしてはいけないんだな
  って思いましたね。」

笑顔を見せる一方で、話が途切れると、
こんな歌を歌う隊員もいたと言います。


◯出撃前に誠隊と交流・三上登喜子さん(91)
 「『咲いた花なら~散るのは覚悟~』っていうんですよ
  『咲いた花なら散るのは覚悟』って、
  人間に例えたら悲しいことですよね」

出会からわずか2日後、森さんは別の飛行場へ。
そのとき三上さんがかけた言葉は
『御成功をお祈りいたします』。

◯出撃前に誠隊と交流・三上登喜子さん(91)
 「『御成功をお祈りします』ということは
  体当たりが成功するってことでしょ?
  なんて、なんて挨拶すればよかったんでしょうね。
  教えてください、今でも」

◯櫻井
 「言葉でないですね」

◯出撃前に誠隊と交流/三上登喜子さん(91)
 「本当にあのときはさよならじゃすみませんもん、
  気持ちが」

自分に見立てたマスコットを作り、
手紙と共に別の隊員に託した三上さん。

それからおよそ2週間後の1945年4月6日。
森さんら26人は沖縄で特攻し、亡くなりました。

1か月以上が経った5月19日。
三上さんの元には、
“森さんからのハガキ”が届きました。




 

◯森少尉から届いたハガキ 
 『登喜子さんからの懐かしきお便りに
  「マスコット」を受取り嬉しくて
  登喜子さんもお元気とのこと
  僕も只今福岡の基地にて翼を休ませて居ります。
  内地の桜も見ずして去るのは残念です。
  しかし、これも運命です。
  立派な死に場所を得ました。
  僕は本当に幸福です。
  登喜子さん僕は元気なときは
  お便りいたしますからね』

◯櫻井
 「これが1ヶ月後に届いたんですか?」

◯出撃前に誠隊と交流/三上登喜子さん(91)
 「誰かに頼んだんでしょうね、投函を…
  本当に森さんが私たちのことを声かけてくださったから
  (誠隊の)みなさんにこういうふうに会えて
  特攻隊というものを、身にしみて…」

戦争に翻弄された、若者たち。




 

◯櫻井
 「若い世代に三上さんから伝えたいことは?」

◯出撃前に誠隊と交流/三上登喜子さん(91)
 「この平和が続くように犠牲になったみなさんのことを
  忘れないでいてほしいと思うんです。」

◯櫻井
 「当然ですけど、戦争は絶対に…」

◯出撃前に誠隊と交流/三上登喜子さん(91)
 「もちろんです、もちろんですよ
  だって戦争していいことなんてありませんもんね」

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