11月29日 田邊 研一郎

父と鮎釣り

 

1年前の夏、アナウンス部のホームページにあるシーズンクエスチョンというコーナーに

「この夏挑戦したいこと」という設問があり「父と鮎釣りをしたい」と答えましたが、今年の夏ついに実現しました。

 

両親は仕事の都合で数年前まで10年近く大阪に住んでいた時期があり、近況を母に聞くと

「お父さんは今日も鮎釣りにいったわ」と言うことがしばしばありました。

父がそれほど楽しんでいる鮎釣りはどんなものなのか、東京に戻ってからは、なかなか行けずにいるのは知っていたので、近場で鮎釣りは出来ないのか?と聞いてみると、なんと「多摩川でも釣れるよ」とのこと。8月上旬、緊急事態宣言下でしたので都外に出ることなく世田谷の宇奈根付近の多摩川での鮎釣りに行ってきました。

 

父はまもなく70歳。小学校の教員時代は「自然に親しむ会」の顧問をしていたので、自然相手の遊びはいつも父から教わって来ました。

今回の鮎釣りもまさに一からイロハを教わりました。

鮎釣りには何種類か釣り方があり、父が京都の木津川でやっていたのは友釣りという、おとりの鮎を使って鮎の縄張りに侵入させ、怒って攻撃してくる鮎を針に引っ掛けるものですが、

今回はコロガシ釣りというもの。エサやおとりはなく、5つから7つの連なった掛け針におもりをつけ、川底を転がるように引きずり鮎を引っ掛ける釣法です。

昼の12時を回ったころ、まず父が手本を見せてくれた。5m近くある長尺の竿を弧を描くように綺麗に振り込む竿捌きは実に格好良い。

 

見よう見まねで、流れに対して垂直に立ち、正面に仕掛けをを振り込む。流れに乗せて90度転がし、その間、おもりが川底を7、8回コロコロと叩く。時間にして10秒。この動作を川の流れに乗せて何度も何度も繰り返す。

川底の石に掛け針が絡んで、たった一投で掛け針をダメにしてしまうこともしばしば。

苦戦していると父から「川の瀬の部分のキラキラしているところに投げてごらん」とアドバイスがあり、言われた通りの場所にスーッと投げ込みコロコロコロ転がしながら、刹那、ビィーンという強い当たりが!!オオオオオオオ!!掛かった!!

 

もう、それからは虜です。

無我夢中で繰り返し、繰り返し仕掛けを振り込み、気がつけばあっという間に3間。父子で7匹の鮎を釣り上げました。

 

鮎釣りを経験して感じたのは、餌で釣る「待ちの釣り」とは違い、鮎の特性を頭に入れ、川の流れ、時間帯によって鮎がいる場所を読み、仕掛けを投げ入れる「攻めの釣り」であるということです。川のせせらぎを聴きながら自然と対峙する時間、鮎が掛かった時の手に伝わる感覚、なんともかけがえのない時でした。

父が夢中になるのがよくわかりました。

今回は仕掛けや竿の手入れは父に任せきり。

自然相手に遊ぶときは準備と後始末がつきものですが、今回はすっかり父に世話になり、

1番楽しいところだけ楽しませてもらいました。

 

できれば今年もう一度行きたかったのですが叶わず。来年は弟も一緒に行く予定です。

江戸時代、人々が仕事そっちのけで熱中することから幕府が「鮎釣り禁止令」を出した

と言う逸話があるほど。しっかりとアナウンサーの仕事をしながら余暇を楽しみたいと思います。