3月7日 「解説放送、ご存知ですか?」 杉上 佐智枝

今日3月7日、ソチパラリンピックが始まりましたね。
多くの感動をもらったソチオリンピックが閉幕して、早2週間。
このソチ五輪は、私のアナウンサー人生にとっても、大きな出来事になりました。

私は、開会式放送の副音声で、「解説放送」の実況を担当しました。

解説放送とは、目の不自由な方たちのための、補助放送。
メイン実況の隙間に、目の不自由な方たちが想像しやすいように、短く言葉をフォローする放送です。メインが「風船が飛んでいます」と言えば、解説放送では「赤い巨大風船」と、言葉を足します。

最初は戸惑いました。
「見ればわかるものは喋るな」と、黙る勇気を持つことを是としてきた私たちアナウンサーにとって、「見えるものを喋る」というのは、まったく逆のアプローチ。
しかも、短い言葉で一瞬で表現するのは、一番難しいことです。

車窓に流れる景色を見ては、珍しい形の花を見つけては、ぶつぶつ・・
新人アナに戻ったような新鮮な日々を過ごしました。

2月8日土曜未明。ソチからの生映像を観ながら、どういう表現をしようか、フル回転。
サポート役の上田まりえアナと、ロンドン五輪開会式で解説放送を担当した井田由美アナが後見についてくださり、翌朝、怒濤の生放送でした。

井田アナの素敵な表現をお借りすることもしばしば。

皆さん、五輪の聖火台、覚えていますか?
丸い池をぐるりと取り囲んだ淵、その端が塔のように持ち上がっている。

その形状を初めて見たときに、私が最初に思いついたのは、、、

「とぐろを巻くへびが頭をもたげている」

美しくない。当然、使えません。
サブの上田アナは、「・・・ネッシーに見えます」

確かに。一番写実的ではある。

井田アナは即座に、「池を翼で抱えた鳥が、空を見上げているような形」

先輩の表現力に感銘を受け、自分の未熟さを痛感するばかりの時間でしたが、またトライしたい!と強い熱が湧き上がっています。

後日、目の不自由な方から、「解説放送をしてくれてありがたかったです」という推賞の投書をいただきました。
私たち解説放送チームにとって、飛び上がるほど嬉しく、やりがいと感謝を新たにした出来事でした。

出産と職場復帰を経験してから、人の役に立ちたい、社会に恩返ししたいという気持ちがさらに強くなっている昨今。
これから、東京オリンピック、パラリンピックに向けても、解説放送がさらに増えるといいなと願います。