平安京が定められて1200年がたった今も、国内外から一年に五千万人が観光に訪れるほど、多くの人々が京都に魅せられています。それは何よりも、京都が長い間、日本の都として伝統文化を育み、継承してきたことによるところが大きいでしょう。本展覧会ではその京都の400年前の姿に注目します。
はじめに、天下人が覇を唱えた時代の人々の暮らしを、京都市中と郊外の数々の名所とともにつぶさに描き出す「洛中洛外図屏風」によって、当時の都の全体像を俯瞰します。本展では、国宝、重要文化財に指定される7件すべてが一堂に会します。祭り囃子の音色が聞こえてくるような画面には、生き生きとした人々の姿と、四季の景観が鮮やかに描かれています。さらに「洛中洛外図」には、京都を支配した人々の都へのまなざしが色濃く反映されています。「洛中洛外図」の名品の数々によって、当時の天皇の権威や、武士、寺社の勢力がどのようにあらわされているかを知ることができるのです。
さらに「洛中洛外図」でもしばしば描かれた、京都を象徴する3つの場所をとりあげます。伝統権威の象徴である京都御所、徳川将軍の権力を誇示する二条城、そして石庭で世界的に知られる龍安寺のそれぞれの室内を飾った襖絵(含障壁画)を、当時の空間構成や配置を検証しながら展示します。これは、現代まで大切に受け継がれてきた類まれな伝統文化を空間ごと体感いただこうとするものです。そこには宮廷文化・仏教文化そして武家文化が織り成す、京都ならではの美の空間が広がります。現在は当地を訪ねても、描かれた当初の絵を目にすることはできません。本展は花のみやこ、京都の伝統文化に育まれた魅力ある美の空間を体感できるこれまでにない展覧会です。
〈重要文化財〉「洛中洛外図屏風 舟木本」左隻3扇(部分) 岩佐又兵衛筆 東京国立博物館蔵