STORY

第8話
2024.09.14 OA

捜査一課の手嶋てしま(阿部亮平)が、夜道で若い2人組の男に襲われ、拳銃を奪われた。その直後、手嶋を襲った犯人のうちの1人が拳銃で撃たれて死亡した――。

そんな重大な事件が起きているとは知る由もないさくら(小芝風花)たち身元不明人相談室に、捜査一課から身元特定専従班として捜査に加わるよう協力要請が舞い込む。ご遺体は20代の若い男性で、至近距離から拳銃で頭部を撃ち抜かれ即死。捜査一課は殺人事件として犯人の行方を追っているという……。

ご遺体の上半身に入れ墨が彫られていたことから、暴力団員の可能性が高い。すると入れ墨を見た武藤むとう(半海一晃)が、「こいつは倶利迦羅紋紋ですか」。実は元マル暴の武藤。その入れ墨の特徴から、現場付近に事務所を構える染野組の構成員に違いないと言う。いつもなら威勢よく飛び出して行く桜も「さすがにヤクザ事務所は……」とおじけづくが、みんなに言いくるめられ、武藤と2人で染野組を訪ねることに……。
ところが、組長の染野(泉谷しげる)をはじめ組員たちはご遺体の写真を見ても「知らない」の一点張り。桜は、そんな染野組の事務所に“ある違和感”を覚えて――。

一方、まこと(大島優子)は、捜査一課の沙耶香さやか(川瀬莉子)を問い詰めて事件の経緯を聞き出すと、桜を連れて自宅謹慎中の手嶋を訪ねる。どんな理由があろうと警察官が拳銃を奪われるなどあってはならない……「僕は刑事失格です。きっと彼は、僕の拳銃で……」と自責の念に駆られる手嶋に、真は「私たちを信じて」。犯行に手嶋の拳銃が使われたと決まったわけではない。手嶋を救うためにも、次の事件が起きる前に絶対にご遺体の身元を突き止め、拳銃を取り戻すことを約束する桜と真!果たして事件の真相は――!?

以下、ネタバレを含みます。

桜は、染野組の事務所に古い野球のグローブが2つ置いてあったことに違和感を覚えていた。組員からは野球をやるような爽やかさを少しも感じないのに、グローブは使い古され、しかもそのうちの1つには『SK』というイニシャルのような刺しゅうが入っていたからだ。違和感を拭えない桜に、元高校球児で甲子園を目指していた手嶋は「野球はしなくても、たまにキャッチボールくらいはするんじゃないですか」。その言葉に、ハッとひらめく桜と真。もしかしたら……。桜と真の予想通り、染野組の事務所周辺で若い男性2人がキャッチボールをする姿がたびたび目撃されていた。手嶋を襲った2人に違いなく、ご遺体の方はあまり上手ではなかったようだが、加害者の方は元メジャーリーガー・野茂英雄のトルネード投法をマネながら「野茂こそが俺の神様だ」と豪語していたらしい。報告を受けた手嶋は「『野茂こそが俺の神様だ』って、本当にそう言ったんですか?」――手嶋はそれと同じ言葉を口癖にしていた男に心当たりがあった。高校時代キャッチャーだった手嶋とバッテリーを組んでいた梶原真司(落合モトキ)、イニシャル『SK』だ。手嶋は自分が襲われた理由に気付き、「僕は、かつて自分がしたことに落とし前を付けなきゃならない」と、1人で梶原の元へ向かう……。

手嶋と連絡が取れなくなって焦る桜と真。このままでは手嶋が危ない……。2人は梶原の妹・灯里(羽瀬川なぎ)から居場所を聞き出そうとするが、灯里は「あの人は兄じゃありません。とっくの昔に縁を切りました。ヤクザが身内だなんて」。やはり梶原は染野組の一員だった。灯里の話では、梶原は組長のことを父親のように慕っていたらしい。ご遺体の写真も、梶原の弟分だった池田義人(三浦獠太)で間違いないと言う。さらに灯里は手嶋のことも覚えていて、「兄は手嶋さんのことを恨んでいます。夢を奪った張本人だから」――。
結局、梶原の居場所はわからないまま。こうなったら染野組に聞くしかない。桜は意を決して染野組に押し掛けるが、若頭の田所(近藤公園)たちは相変わらず知らぬ存ぜぬ。組を守るために梶原を見捨てようとする彼らのやり方に、「ヤクザの絆なんて、そんなもんかよ!」とぶちかます桜。すると、「もういい田所」――桜に根負けした染野が、全てを話し始める。染野組はすでに組の運営が立ち行かず、大所帯の組に吸収されることになっていた。しかし、染野組の受け入れ先は、麻薬を扱う組。今まで麻薬にだけは手を出さなかった染野だが、生き残るためには仕方ない……そう諦めていた時、梶原と池田だけは“絶対に反対だ”と猛反発し、“カネなら自分たちがなんとかする”と言い出した。その結果、池田は命を落とし、梶原が追われる身に……。「2人とも間違いなく、うちの組のもんです……俺のかわいいバカ息子たちだ」と認める染野は、「今日をもって、この染野組は解散する!」と宣言し、「池田の亡きがらは俺が引き取らせてもらう。あとは……梶原を助けてやってくれ」と、桜に心当たりの場所を伝える……。

その頃、手嶋と梶原は母校で対峙していた。「俺があいつを殺した」と打ち明ける梶原。組の資金繰りが厳しいことを知った梶原と池田は、手嶋から奪った拳銃を使って現金輸送車を襲う計画を立てたが、直前になって梶原は犯行をためらった。すると池田が「何びびってんすか」と梶原から拳銃を奪おうとして、もみ合ううちに誤って発砲してしまったのだ。「俺は……あいつを……」と後悔の念に駆られる梶原に、手嶋は「今ならまだやり直せる。自首してくれ」。しかし梶原は高校時代を思い出し、「やり直す……またそれかよ」。12年前の夏、地区大会の決勝前、梶原の肘はすでに限界に達していた。それに気付いた手嶋が監督に進言。その結果、梶原は決勝戦のマウンドに立つことができず、チームも敗れたのだ。手嶋にしてみれば梶原の将来を考えてのことだったが、梶原は悔しさから自暴自棄になり、ヤクザの道へ……。「今さら何をどうやり直せるってんだ!」。手嶋に銃口を向ける梶原。そのとき、「待ちなさい!」――駆け付けたのは、真だ。「梶原さん、あなたは、彼のことを憎んでなんかいないんじゃないですか?銃を奪った相手が手嶋刑事だったのは、ただの偶然だったんじゃないですか?」――真の言う通りだった。梶原はあの夜、他の刑事を鉄パイプで襲うつもりが、相手が手嶋だとわかってとっさに木の角材に替えた。現金輸送車を襲うのをやめたのも、手嶋の銃を犯罪に使いたくなかったからだ。本当は梶原も分かっていた……12年前も今も、全部を手嶋のせいにして逃げているだけだと。でも、今更どうすることもできない……。梶原は諦めたように、「悪かったな、淳之介……」と銃口を自分のこめかみに押し当て、自殺を図る――寸前、桜が駆け付け、野球ボールを梶原に向かって投げる!「組長から、あなたに伝言です……今までありがとうよ……だが染野組は解散する」。そのボールが染野からの餞別だとわかって手を止める梶原に、手嶋が言う、「おまえのしたことを絶対に許すわけにはいかない……でも、それでも、やり直せる。負けんなよ真司!」。手嶋の揺るぎない思いに心打たれた梶原は、銃を下ろす……と、目の前に灯里が現れる。「……お兄ちゃん」。梶原には、まだ帰る場所があるのだ。やり直す決心をした梶原は「最後に……いいか」と、手嶋とキャッチボールを交わす。「戻って来たら、またやろう」と手嶋。「……ああ」と答える梶原に、寄り添うようにして笑う池田の姿が、桜には見えたのだった――。

その夜、事件の報告書を書き終えた桜は「なんかおいしいもの食べに行きましょうよ」とみんなに声を掛けるが、「俺用事あるから」と堀口ほりぐち(戸次重幸)。今日が結婚記念日の堀口は、武藤に描いてもらった家族の絵を手に、ひとり足早に帰っていく。……が、その直後、繁華街の路地裏で、堀口は遺体となって発見された――。