STORYストーリー

82019.03.09

たく(坂口健太郎)かえで(川口春奈)は、24年前に起きた『イトエ電機社宅殺人事件』で死刑判決を受け長い獄中生活を送っている式根しきね大充ひろみつ(片岡鶴太郎)の冤罪を晴らしてほしいと聡子さとこ(市川実日子)から頼まれる。『イトエ電機社宅殺人事件』は、式根が暮らしていた社宅のクリスマスパーティーでシャンパンにシアン化カリウムが混入され、6名が亡くなった事件。直接証拠がない中、シャンパンを持ち込んだ式根が執拗な尋問の末に自白したことが決め手となり死刑判決を受けた。式根との長年の手紙のやり取りで警察の杜撰な捜査を知った聡子は、もし冤罪なら癌で余命の短い式根が生きている間に助けてほしいと話すが、再審は『開かずの扉』と呼ばれるほどの難関。ずっと式根を弁護してきた塩原弁護士は生前に4度の再審請求をしたが、全て棄却されてきた。



式根に接見した拓と楓は本人が再審請求を望んでいないことを知る。自らも事件で妻を亡くし、裁判でも散々希望をくじかれてきた式根は、希望を持つことが却って苦しいのだと話す。別府べっぷ所長(杉本哲太)も今回の再審請求はこれまでの弁護とは訳が違うと釘を刺す中、拓はできる限りのことをしたいと話す。
塩原弁護士が残した大量の資料を頼りに事件を調べる拓と楓、穂香ほのか(趣里)は、犯行に使われた毒物が当時イトエ電機の工場で働く人なら誰でも持ち出せたこと、式根の自白前と自白後で事件関係者の目撃証言が大きく変わっていることに気づく。しかし、当時証言を変えた関係者に会いに行くと、皆終わった事件だと口をつぐむ。拓は事件に早く決着をつけたいという心理が当時の目撃者の証言に影響したのではと推測する。
さらに拓たちは式根の一人娘・松ケ下まつがした玲子れいこ(星野真里)を訪ねるが、事件以来マスコミから追い回され世間から冷たい扱いを受けてきた玲子はもう式根に関わるつもりはないと心を閉ざす。マスコミの人間として罪悪感と無力感を感じる聡子は、『東央大学生殺人事件』を追う番組を作っていた時、秋保あきう(藤木直人)に「根拠もなく冤罪の可能性があると言うことは被害者遺族の気持ちを踏みにじる行為だ」と言われたと話し、いまだに秋保が自分にそっけないのはそのせいだと語る。



そんな中、楓は事件が起きたパーティーの直前、当時子供だった玲子が泣いている女の子・由美ゆみをなだめていたという目撃証言が書かれた塩原弁護士のメモを見つける。メモには由美が「もうすぐ死ぬ」と不穏な言葉を口にしていたと記されていた……。さらに拓は当時の警察の『引き当たり捜査』の写真に違和感を感じる。犯行時の状況を再現させるために社宅から毒物の瓶が捨てられていた沼地までの道のりを式根が自ら案内したはずの『引き当たり捜査』だが、秋保の協力を得て調べると、日の差し方や角度に不審な点が。写真は先にゴール地点であるはずの沼地から撮られており、順番を入れ替えることによって毒物の捨て場所を知らなかった式根があたかも社宅から沼地に案内したかのように見えるよう警察が捏造したものだったのだ!
再審請求に向けて希望の光が見えてきた中、拓と楓は再び式根に接見する。前回とは違い穏やかに微笑み再審請求に同意する式根に安堵する楓だが、拓は式根の様子に異変を感じていた……。一方マスコミの報道によって風化していた事件が再び関心を集めたことで事務所のメンバーは手応えを感じる。そんな中、突然事務所を訪れた玲子が聡子を平手打ちする!事件が蒸し返されたことで再びマスコミに追いかけられることになった玲子は、中途半端な正義感で人の人生を振り回すな、と聡子を責める。
その夜、落ち込む聡子は秋保を呼び出し、マスコミの人間として抱える葛藤を吐き出す。立場は違いながらも聡子の想いや熱意を汲む秋保に救われる聡子。だが、その頃式根が刑務所内で倒れてしまう……!医療刑務所に駆けつけた拓と楓を待っていたのは記憶が混濁した状態の式根。長年の拘置所暮らしで精神的に疲弊し妄想や過去の記憶に囚われる“拘禁反応”が出てしまった式根を前に、拓は悔しさから激しい憤りを覚える。
翌日、拓は聡子宛に式根から届いたという手紙を受け取る。それは、拘禁反応が出る前の式根から、正式に拓に再審請求のための弁護を依頼するものだった。拓たちは再審請求に向け、より確実な証拠を手に入れるため力を合わせる。過去の資料を洗い直していた楓は、聡子と式根がやりとりしていた手紙の中に『沼地にお化けが出る』という噂について書かれていることが気になる。式根の手紙によると、毒物の瓶が捨てられていた沼地には「沼の上に大きな影が浮かび、それを見ると死んでしまう」という噂があったという。楓は塩原弁護士のメモにあった、事件の日に女の子が「もうすぐ死ぬと言いながら泣いていた」という記述を思い出す。楓の言葉に拓は何かを閃く……!!
そして、拓と楓は玲子を連れて秋保の大学へ。そこで待っていたのは、事件の日に泣いていた玲子の同級生・由美(酒井美紀)。状況を飲み込めない玲子と由美を、拓は簡易的に沼を再現するために床に水の張ってある実験場に案内する。一同が簡易型沼の前に立つと、左右から霧のように水蒸気が発生し、照明が落とされる。拓たちが由美一人を残してその場を去ると、その瞬間、由美の背後でライトが点灯。驚いた由美が振り向くと、そこにはなんと沼の真ん中に虹のような光を纏った巨大な人影が現れる!!
驚いた由美はその場に尻餅をつき、同時に沼の人影も消える。拓は、由美に事件のあった日にも同じものを見たのではないかと問う。秋保は、この現象は『ブロッケン現象』といい、ある気象条件を満たすと霧に映った観測者の影に後光がさしたような虹色の像を作るのだ、と説明。実は事件のあった日、毒物の廃棄された沼地ではこの現象を生む条件が揃っていた時間帯があった。拓に詰め寄られた由美は、事件当日に母親に頼まれて毒物の瓶を沼地に捨てに行ったことを告白する!!当時、由美の家では会社をリストラされイトエ電機の工場で働き始めた父親が家族に暴力を振るっていた。パーティーの日、母親から瓶を沼地に捨てて来てほしいと頼まれた由美は中身が何であるかも分からぬまま瓶を捨てたのだと話す。暴力を振るう父親を殺すために、母親がパーティーで毒物を使ったと気づいたのは事件からずっと後のことだったと話し玲子に謝る由美。玲子は自分が無実の父・式根を恨んで来た長い時間を前に呆然とする。
そして始まった再審請求審の日。すでに亡くなった母親の代わりに証言台に立った由美が、式根の無実を訴える証言をする。拓は式根と玲子の中では事件は風化せず、ずっと苦しみ続けていると話し、過去の判例に囚われず真実に即した決定が下されるようにと裁判官に訴える。
しかし数日後。拓たちの元に届いたのは再審請求棄却の通知だった……。一同は、「明らかな証拠を新たに発見したと認定できない」という裁判所の通知に愕然とする。そんな中、拘置所の接見室には式根に会いに来た玲子の姿が。冤罪被害によって絆を断たれた父と娘は、アクリル越しに悲しい再会を果たす。そして拓は、今回も過去の判例を覆さなかった裁判所に向け、静かに挑むような視線を向けていた……。



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