22年前に書かれた本が、なぜ今読まれているのか?作家・五木寛之さんが、今どうしても伝えたいこと
これまでにおよそ300タイトルの本を執筆
売り上げ100万部以上のミリオンセラーが9冊もある、日本を代表する作家
![]() | 【特別授業】 |
◆濁水をただ嘆くな!
五木さんが『大河の一滴』を書こうと思うきっかけになった、中国の物語があります。そこで語られているのが「濁水をただ嘆くな」~~大河の水はときに澄み、ときに濁る。川の水が清らかに澄んだ時は自分の冠のひもを洗えばよい、もし川の水が濁ったときは自分の足でも洗えばよい! ~~これは現状を嘆くのではなく、自分がその環境の中で何ができるかを考え、行動することが大事だと教えているのです。どうにもならない! そんなふうになった時、泣くのはいいことだと五木さんは言います。でも「泣くのはいいけども、泣き言は言うな!」八方塞がりでどうにもならないと思っていても、活路はどこかにあるのです。
◆本当に辛い時こそ“ユーモア“を持て!
極限状態の中でも、生きていく上で人には笑いが必要であると五木さんは言います。笑える状況じゃない時でもハハハと笑う…そういう人の方が厳しい条件の中で生き抜いたというエピソードが色々あるからです。“ユーモア”というのは単に暇つぶしのことでなく、人間が人間性を失いかけるような局面の中では、人間の魂を支えていく大事なものなのです。
◆極限状態を乗り切れる人は、「おはよう」や「いただきます」が言える人!
厳しい環境の中でもちゃんと挨拶ができる、マナーやエチケットを忘れない…これらは、極限状態の中で生きていく上で大事なことかもしれないと五木さんは言います。今の世の中、ルールを無視して自分のことだけを考える人もいますが、本当に最後に生き残れるのは、社会的ルールを守れる人かもしれません。
◆自分はもうダメだと覚悟を決めた人間に「頑張れ」と言わない!
苦しんでいる人がいたら、激励の言葉をかけるのではなく、相手に寄り添い、その人の苦しみを分かってあげることが大切だと五木さんは言います。人間は誰でも本当は死と隣りあわせで、生きるということは苦しみの連続です。しかし、悲惨な極限状態の中でさえも、人の善意というものは存在する。極楽は地獄の中にたしかにあるのです。
◆「悲しい時には悲しい歌を」
辛くて悲しいとき、五木さんはいつも悲しい歌を歌っていたと言います。それは…坂本九さんの『上を向いて歩こう』。上を向いて涙がこぼれないように歩いていこう…涙をこらえつつも歩いていこうという歌詞なのです。
◆人はみな「大河の一滴」である
人間の存在とは、本当に取るに足らないような小さなものである「けれども」ということなのだと五木さんは言います。人は小さな一滴の水の粒にすぎないが、大きな水の流れをかたちづくる一滴であり、永遠の時間に向かって動いていくリズムの一部なのです。