12月21日、パチューカ戦後、西野朗監督会見
理想ととしているメキシコのサッカー、そこのクラブチームであるパチューカのチームスタイルをリスペクトしている。目標にすべきチームと考えている点も多かったので、今日対戦出来た事をうれしく思う。また、この大会で3大陸、スタイルの違う強豪と対戦出来た事をうれしく思う。そういう中で、ガンバ大阪のスタイルで、真っ向から勝負しながら結果を出せたことをうれしく思う。選手も臆することなく、チャレンジスピリットを持って戦ってくれた。次につながるゲームだった。
しかし、選手には相当なダメージもあり、やりたい部分が全部出し切れたわけではない。持っている力は出し尽くした結果だと受け止めている。準決勝でああいうゲーム(マンチェスター・ユナイテッドに5−3)になってしまった。そういう意味では、このようなコンディションでも(パチューカに)1−0というゲームコントロールが出来た事は評価したい。最後はアップアップでしたが、全て出し切った中での事。選手は、ロッカールームでは喜んでいるというより、憔悴し切っていた。次にまた厳しいゲーム(25日・天皇杯)が残っているので、喜ぶどころではないのかも。とにかく3試合とも、全て出し切った状態なのは、大きな経験。
Q.浦和レッズに続き、ガンバ大阪も3位。Jリーグのどのような強さを表している?
レッズの過去はどうでもいいと思っています(笑)。レッズがどうだから、ガンバがどうということでもないと思う。Jリーグを代表した昨年のレッズと今年のガンバのアプローチも違う。クラブのスタイルも違う。また違ったJリーグの中の1チームが今年のCWC(クラブワールドカップ)にチャレンジできたというだけの事。ただし、Jリーグの代表としてアジアも制覇しなければいけないのが、日本サッカー界だと思う。今年は3チーム(ガンバ大阪、浦和、鹿島)が参戦した中、やはりJリーグがアジアのリーダーとなっていかなければいけない。その使命を、今年はガンバが果たせて、こういう新しい、高いステージでチャレンジできた。これはJの宿命では。常にアジアのリーダーになっていなければいけないと思っている。アジアを取れた、そしてこの大会である程度の使命は果たせたという事だけで、レッズと比べられたり、「昨年の〜」という言い方をされるのは、私にはピンとこない。
Q.パチューカはポゼッション志向の強いチーム、DFにどういう指示を?
相手は、非常にテクニックを発揮したショートパスを速く正確につないでくるチームで、マンチェスターUとはまた違うスタイルに対応しなければならなかった。ディフェンスは、プレッシングを怖がらずにプッシュアップ。中盤でのコンパクト性を保ちながら、人ではなくボールへのディフェンスを強くする。お互いの距離感や、前線からのファーストディフェンダーへの入り方に気をつけながら。入りはできていたが、向こうはそういうところも巧みに打開してくるチームだった。少しずつ目が慣れて、ボールを奪える瞬間は多くなったが、もっと厳しいプレッシングを理想としていた。前半、やはり少しずつディフェンスラインが落ちて来て、理想より10メートル以上落ちていた。ハーフタイムには、「きついけど中盤の選手は運動量を増やしてラインを上げよう」と。言ったものの出来なかった。やはりリトリート(退却)してしまい、押し込められてしまった。何十分かは出来たと思う。そのお互いの距離感と強いプレッシングで、対応できたのかなと思う。パチューカのボールの動かし方はさすがだなと思った。
Q.世界と戦っていく上で、今のアプローチで間違いない?変化は必要?
チームコンセプトやスタイルは持っているが、やはり相手のあっての事なので。マンチェスターUとの対戦、パチューカとの対戦。いろんな状況に応じたアプローチを考えていかなければいけない。もちろんベースとなる物はあるが、選手が臨機応変に状況に応じた戦術眼を持って戦う、2チームに対しての狙いは多少は出来ていたと思う。これが世界で、全てが素直に通用するかというと、もっと違うスタイルの選手や、戦術を乱してくるようなロングフィードを使われれば、プレッシングもなくなる。いろいろな意味で柔軟に対応することが必要なのでは。チームとして、このゲームはこうやろうというプランに関しては、共通理解を持って戦えた3ゲームだった。常に相手に対応していく事も考えて戦う必要はある。
Q.後半の選手交代では、どのような指示を?
播戸に関しては、運動量や前線からのチェイシングを求めていくことを考えるならば、交代させず置いておいた。ただ、自分のプランの中では2点目をいかに取るかと。あの状況で守り切るというメッセージは送りたくない。追加点を取りにいくと、ハーフタイムでも強く要求しました。播戸に関しては、オフェンシブなメッセージのつもり。あいつは今日はあまりにも外しすぎ(笑)。そういう部分のスイッチは、攻撃を考えるならば当然だし、ある程度ディフェンスのことは目をつぶり、点を取りにいくシフトとした。それに、二川を使ってみたかった。制限しながらも使いたいとずっと思っていた。あいつのワンプレーは。決定的なことができるプレー。それを求めた。(ルーカスに代えて)武井を入れたのはディフェンス。ワントップにして、相手の両サイドを消したい、それにフィニッシュではなく、中盤の支配を、残り15分の時間帯は求めた。全体的なサイドアタックとフォアチェックを強めたかった。最終ラインの裏はスペースがたくさんあったので、山崎1人で十分。
Q.今大会の教訓は?今後、新しい選手をJリーグや天皇杯で起用する?
今はまだ整理も出来ていない。教訓と言われても、まずいいチャレンジをした事を分析する必要がある。その上で、生かすことがないなんてなれば、この大会に参戦した意味がない。チームとして振り返りたいが、そんな時間はなく25日にはゲーム(天皇杯)がある。そこではダイレクトにこの経験を生かせないと思う。この疲労度で、またフレッシュに準備して入っていくのは、現段階では厳しいと思っている。それを選手に要求するのも有効ではない。ただ、コンディションの回復を祈りたい。必ずこの3試合は、ガンバにとって大きなプラスになる。
Q.現時点で、ガンバ大阪の限界が一番出たのがマンU戦だと思うが、今後の方向性は?
あのチームに「消された」と言われたら、そういう言い方をされることだけでも非常に光栄では。逆に良さがどれだけ出せるか、という対戦相手だったと思っていたし、消されるのは当然だし、全く格が違う相手にトライをした中、通用した部分はある。ゴールを取ったシーンは、点差が離れた中だったが、ヒントがあると思う。ああいう攻撃のやり方、ポゼッションではない、ポゼッションからシンプルな3本以内でフィニッシュに持っていくような。みんなで同じ絵、ボールが3つ動いた先を描けたなら、ああいう成功するシーンがあるという事はイメージ出来たと思う。いろいろな強豪とやる上でイメージした事が、実際にああいうシーンになったと思う。そうは言っても、トライしようという意図、イマジネーションがたくさんあったとしても、ほとんど消されていた。その中で、精度を上げればああいう事が起こると、実感はできたと思う。