ワシントンナショナルギャラリー展

新国立美術館

vol.1


「ワシントンに行きませんか?」


あるPR会社から、そんな電話がかかってきたのは、昨年10月のこと。
なんでも2011年の6月より、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの印象派の名品を紹介する展覧会が日本テレビ主催で開かれるのだが、公式ホームページなどで記事を書くライターとして、私に白羽の矢が立ったというのである。そのためにまずはワシントン・ナショナル・ギャラリーの取材旅行に参加しませんか、という大変ありがたいお誘いであった。

「おお! 初の北米取材。1ヶ月後ならスケジュールは空いていますし、もちろんOK。よろしくお願いいたしま~す」

……なんてふたつ返事でお仕事をお受けしたはいいものの、電話を切ってから、私はハタと考え込んだ。
「あれ、ワシントンって、どこだっけ?」

いやいや、いくら地理に疎い私でも、ワシントンとはアメリカ合衆国の首都で、そこにはホワイトハウスという白く輝く建造物があり、あのオバマ大統領が住んでいる、ということぐらいは知っている。

ホワイトハウス

しかしアメリカといえば「やっぱニューヨークでしょ?」な、一般的な日本人(これもものすごいプロトタイプですが)である私には、ワシントンがアメリカのどの辺に位置し、ホワイトハウスの他に何があるのか、その具体的なイメージがさっぱり浮かんでこないのだ。

そもそも、アートの仕事でアメリカに行くこと自体珍しい。多くの日本人が、芸術と歴史を訪ねる旅といえば、フランスやイタリアなどヨーロッパに行くように、過去私が縁あって取材させてもらった美術館も、ほぼフランスを中心としたヨーロッパ諸国。

もちろんアメリカにも、今回うかがうワシントン・ナショナル・ギャラリーやボストン美術館など名だたる美の殿堂があり、世界各国から集めた名品を数多く所蔵していることは「知識の上では」知っている。
が……それらが実際に制作された舞台ではないためか、アメリカってなんかノーマークだったんだよね。
もちろん、第二次世界大戦以降、この国を中心に起こった抽象表現主義や、ポップアートなど現代美術の大ファンということなら、話は別なんでしょうけれど……、などと考えながら、とりあえず目の前のパソコンに「ワシントン」で検索をかけ、最初に出てきた『ウィキペディア』などを開いてみると……

「ワシントンD.C.(ワシントンディー・シー、Washington, D.C.)は、アメリカ合衆国の首都である。法律上の正式名称はDistrict of Columbia(コロンビア特別区)だが、歴史的にThe City of WashingtonとTerritory of Columbiaが統合されて成立した経緯から、一般にはワシントンD.C.、ワシントン・コロンビア特別区(ワシントン・コロンビアとくべつく、Washington, District of Columbia)、Washinton、the District、または単にD.C.と通称される」と書いてある。

map googlemap


またまた難しいことを……。ワシントンがアメリカの首都なのはいいとして、「コロンビア特別区」って何なのさ。

というわけで、次回はアメリカの中でもなんだかスペシャルな匂いのする「コロンビア特別区」についてお話します。


アート・ライター。現在「婦人公論」「マリソル」「Men’s JOKER」などでアート情報を執筆。
アートムック、展覧会音声ガイドの執筆も多数。