さて、この回では、モール以外の街の風景も、駆け足で見ていこう。
今まで見てきたように、モールとは、巨大なモニュメントやミュージアム、行政施設が建ち並ぶワシントン最大の観光エリアだが、ともすれば「アメリカを見せるための人造都市」感が漂っているのは否めない。それにくらべて、人間の生活や体温が感じられるのが、ワシントンD.C.の北西部近郊に広がるジョージタウンといえるだろう。
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通り沿いにレンガ造りの小粋なショップやレストランが建ち並び、その奥には高級住宅街が広がるこの町は、アメリカの建国前からタバコ流通の中継地として繁栄した。街並みは伝統的なアメリカ東部のもので、鉄道が敷かれる19世紀末までは渡し船が行き来していた「チェサピーク・アンド・オハイオ・キャナル」という運河なども、「古き良きアメリカ」といった風情を醸し出している。
このジョージタウンで数年前から話題になっているのが、「ジョージタウン カップケーキ」というスイーツのお店。また、オカルト映画の名作『エクソシスト』で、神父が身を投げるシーンの舞台となった急な階段「エクソシスト・ステップス」や、ウィスコンシン通りを北上したワシントン一の高台に建つ「ワシントン大聖堂」も観光スポットとなっている。
とくにヘレン・ケラーなどが眠り、レーガン元大統領などの葬儀もとり行われたこのカテドラルは、世界でも6番目という規模を誇る。20世紀に建てられたのに、14世紀ゴシック様式とはこれ如何に?! 無責任な日本人としては、むしろモダニスムに徹した大聖堂の方が、アメリカっぽくていいのでは? という感じがしないでもないが、内部では、アポロ11号の乗組員が持ち帰った月の石が、ステンドグラスにはめこまれていたりする。そういったところは、なるほど「アメリカらしい」と言えるだろう。
さて、この大聖堂をグルリと周り、今度はマサチューセッツ通りを下っていくと、道の両側に瀟洒な建物が並ぶ、通称「エンバシーロウ(大使館通り)」が見えてくる。ここは、40以上もの各国大使館が軒を連ねる名物エリアで、1929年の世界恐慌後、なんと日本とイギリスが共同でこの地域に大使館を建てたことがきっかけとなって、現在の「大使館通り」に発展した。
つまり、日本大使館はこの通りの一番の古株である。『地球の歩き方』にも「異彩を放っている」と書いてあるし、どんなステキな建築なのやら、と車の中からガイドさんが指差した建物に目をやると……。
見えてきたのは、菊の御紋が光る、四角いハコ(新館)。
あまりにもシンプルすぎて、一瞬、デッカい交番かと目を疑ったその建物は、良く言えば「堅牢」とでも申しましょうか? デコラティヴ&ゴージャスなお屋敷風大使館が多い中、確かに異彩を放っておりました。(続く)
アート・ライター。現在「婦人公論」「マリソル」「Men’s JOKER」などでアート情報を執筆。
アートムック、展覧会音声ガイドの執筆も多数。