印象派の画家たちが、近代化が進むパリや都市生活を題材にしたのに対し、カミーユ・ピサロは田園風景や農民を好んで描きました。しかし晩年には本作のような街の風景を多く描くようになります。ピサロは後年、慢性の眼病に患わされたため、風や光の刺激がある野外での制作が困難となりました。そのため、部屋を借り、窓から見た街の風景を描くようになります。その際、モネの描き方を参考にして、同じ風景を複数点、異なる時間帯や天候のもとに描いています。本作品はパリのリヴォリ通りのホテルの部屋から、チュイルリー公園とルーヴル宮を描いた28点の連作の一点です。手前左にはルーヴル宮殿の建物の一部が見え、その前方のカルーゼル広場、そして木立の向こう側には小凱旋門と公園、さらに後方の建物の奥にはナポレオンが眠るアンヴァリッド廃兵院のドームが覗いています。散策する人々、その横を駆け抜ける馬車を捉えた自由で素早いタッチが、活気に満ちた都市の姿を捉えています。