流行語、というほどのものではないが、テレビで使われる言葉にも、はやりすたりがある。
今では毎日のように耳にするが、昔は言わなかったなァ、と思うのが、「自身」と「楽曲」。
「大谷翔平、オールスターゲームで、自身初のホームランを放ちました」
「〇〇選手は、この夏のオリンピックで、自身2度目の大舞台に挑みます」
「自身に成りすました偽広告の問題で~」
スポーツニュースの場合、ゲームにとって初めてなのか、選手にとって初めてなのか、正確を期すために、念を押したくなる気持ちは分かるのだが、「自身」を省いても、文脈から理解できることが多い。
「自身に成りすました」は、聞いていて何だか妙な感じがする。以前なら「自分に成りすました」(これも、やや違和感があるかな…)、「〇〇氏本人に成りすました」などと言うところであろう。
「ご自身ではどう思われますか?」という質問は、私も口にしてきたが、こんなに、「自身」という言葉が、いわば、むき出しの形で多用されると、昔人間としては、気になってしまうのである。
「〇〇さんが楽曲を提供し~」という芸能ニュースも、よく聞く。
以前は、「曲」とか「音楽」とか言っていた。「〇〇さんが曲を書き」、「〇〇さんが音楽を担当し」、「作曲は〇〇さん」など。
「楽曲」と「曲」は、どう違うのか?
辞書を引いてみてもよくわからない。さまざまな曲の総称が、楽曲、ということらしい。
「曲を書き」よりは「楽曲を提供し」の方が、格調が高く、値打もありそうに響く、ということだろうか。でも、毎日言っていると、「楽曲」も、ありふれた言葉になる。
「この楽曲は、今日発売です!」という芸能ニュースの原稿が来たら、私はどうするかな?
実はもうひとつ、気になっている言葉に、「世界観」があるのだが、これについては、先日、各局のベテランアナが集まる会議で話題となり、放送での使われ方に違和感のある人が多いことが分かったので、いずれ、また…。