先日、ナレーション原稿に「賞状を手渡しました」という一文があり、
「ショ/ージョー」と、私が平板アクセントで読んだら、
「井田さん、ショ/ージョ\ーでは?」とスタッフから指摘された。
仕事の時に携帯している電子アクセント辞典を引くと、
「ショ/ージョー、ショ/ージョ\ー」と両方載っている。
どちらでもいいのだが、先に書いてある方が「よりふさわしいと思われる」という原則があるので、結局、平板アクセントに落ち着いた。
私の電子辞書に入っている『NHKアクセント辞典』は、一代前、すなわち1998年版である。家に帰って、最新の2016年版を引いてみたら、
「ショ/ージョ\ー、ショ/ージョー」と、順番が逆転して、中高(なかだか)アクセントが先になっていた。スタッフの方が、現代の感覚だったということになる。気になって、入社した頃に使っていた1966年版を見たら、「ショ/ージョー」のみ。私はこの版で学んだんだものネ、と納得しつつ、未来のアクセント辞典では、平板アクセントは消え去っているかもしれない、と一抹の不安を感じた。
意外な、目立たないところでも、アクセントは変化している。
通常は、「喫茶店」(キッ/サ\テン→キッ/サテン)のように、言い慣れると、平板が優先アクセントになっていくことが多いのだが、「賞状」のようなケースもある、ということか。
44年前、日本テレビ系列各局の新人アナウンサー研修で、当時の金原二郎アナウンス部長が、「両替をなさりたい方は~」と述べたとき、「リョ\ーガエ」と、頭高(あたまだか)アクセントで発音した。全国から集まった同期の新人アナたちと、思わず顔を見合わせ、後でアクセント辞典を引いてみたら、
「リョ/ーガエ、リョ\ーガエ」と、両方載っていた。
1998年版からは「リョ/ーガエ」のみになったが、頭高もあったとは…。
あれは、新人アナウンサーにアクセント辞典を引かせて、言葉への関心を高めようという、金原さんの研修の一環であったと思う。
普段、意識することなく、ひと昔前のアクセントで読み、話している私。
「かつてはこうだった」と示すのも、無駄なことではあるまい、と開き直って、今年も、新人アナウンサーたちと向き合っている。