またひとつ、私の“定番”が、“廃番”になってしまった…。
化粧品や、衣類の小物、日々使う調味料などは、「コレだ!」と思うものにたどり着くと、ずっと、それを買い続けている。
ところが、私が気に入ったものに限って(と、ひがみたくなるくらいに)、「これは、もう工場で生産しなくなったので、入荷しません」とか、「新しい製品に替わりました」ということが、しばしばある。
メーキャップ・ファンデーションの初代・私の定番は、廃番になってからも、置いてある店を追いかけるように探して、何年か購入し続けたのだが、ついに途絶えて、二代目に。ところが、その二代目が、この秋、「リニューアルで、違う製品になります」という。使う私の肌はリニューアルしないのに、ようやく馴染んだ化粧品が、勝手に生まれ変わるんじゃないよ!と叫びたくなる。
衣類の小物では、ストッキング。私が購入していた色の品番だけが、ある日突然といった感じで、店頭から消えた。近辺の店をあちこち探してみたが、その色だけ、見つからない。私の好きな色は、そんなに不人気だったのかしら?
塩、醤油…調味料の“定番”は大丈夫か? ストックしようかとも思うが、塩以外の調味料は、買い置きには向かないし、塩が何十袋も台所に積み上げてあるのも、不気味な構図である。
プロの料理人ではないのだから、世の中の“定番”、すなわち人気商品に、こちらを合わせていくのが、身の程というものなのかもしれない。
かつて、美術番組で取材した版画家が、
「僕の好きな景色は、なぜか、消え去ってしまうことが多いんです。その思い出を残すために、作品にしているのかな」
と、自作を見ながら、つぶやいていた。
懐かしく、いとおしい風景。後世まで大切に残したい風景ほど、時代の波に翻弄されて、変化し、なくなってしまう…。
そんな高尚な話には、ほど遠いけれど、私のささやかな定番も、あと数年、せめてこちらが現役でいる間は、廃番にならないでほしい、と残り少なくなってきたファンデーションのチューブに向かって、日々ぼやいている。