年々、字が下手になっていく。
思い知らされるのは、年に一度の年賀状の宛名書き。
日頃、用件の連絡はメールで済ませ、自筆で手紙をしたためることは、めったにない。
この原稿だって、書くのではなく、ワープロで打っている。
字は、手を使って書いていないと、情けないほどに、みすぼらしくなってくるのだ。
声も同じである。
同年代の友人と久しぶりに会うと、
「あれ、この人、こんな声だったかな?」
と思うことがある。
かすれた、少し高めの、喉の奥から出るような、いわゆる年寄り声。男性に多い。
男は、会社をリタイアすると、話す場がなくなるのか。
女友達は、声も、話し方も、話の中身も、昔とあまり変わらない。
身体的な男女差ではないと思う。
その証拠に、声優さんは男女とも、80歳代になっても変わらぬ声で、歳を取らないアニメのキャラクターを演じている。
かつて、アナウンス部OB、それも開局当時を知る大先輩の男性アナから会社にかかってきた電話の声があまりに若々しくて、ニセ電話ではないかと疑った若手アナが、「何年入社の方ですか?」と失礼なファクトチェックをしてしまったという“事件”があった。
声は、丁寧に使い続けていれば、歳による衰えが極めて少ないものなのである。
日常、街の中で、もっと声のやりとりがあればいいのに、と思っている。
対面で買い物できる店は少なくなったが、スーパーのレジでも、さりげなく「ありがとう」とか「きょうは寒いわね」と、会話をしている高齢女性を時折見かける。
素敵なことだと思う。
巳年の今年、ヘビが脱皮するように、口ごもる皮を脱いで、もっとお喋りしてみませんか?