《旗手(フローリス・ソープ)》
1654年、油彩・カンヴァス、1403 x 1149 mm
メトロポリタン美術館 ©2011. Image copyright The Metropolitan Museum of Art/Art Resource/Scala, Florence
アムステルダム市警備隊第15区の旗手フローリス・ソープはガラスや鏡の製造を生業とする実業家で、絵画コレクターとしても知られていました。本来、軍隊のモティーフであり、故国のために果敢に戦う兵士を鼓舞する主題だった旗手は、やがて、社会的成功者を描く肖像画の定型のひとつとなりました。レンブラントも、1636年に同じ旗手をモティーフとした男性像を描いています。もっとも、同じ主題でありながら、演劇的な虚構性に包まれた20年前の作品と本作品とは全く異なるカテゴリーに属しています。本作品では、年齢に相応しい落ち着きを見せる男性の静かな肖像として描かれています。帽子の羽飾り、白い襟、絵具の厚塗りで描かれた皮の吊り帯などに、光の描写への強いこだわりが感じられます。