《羊飼いへのお告げ》
1634年、エッチング・エングレーヴィング・ドライポイント、262 x 218 mm
アムステルダム、レンブラントハイス/ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam
1630年代半ばは、レンブラントがルーベンスを強く意識し、激しい感情表現や劇的な場面構成をもつ大作に挑んでいた時代でした。そのようなバロック的傾向がこの版画をも支配しています。描かれているのは、羊飼いたちに神の御子の誕生が告げられる場面ですが、闇の中の光、静寂の中の激しい動きが画面に深い生動感を与えています。暗い夜空を切り裂くように、神々しい光に包まれた天使が中空に浮かんでいます。画面右上の樹木に覆われた部分や左下の半ば闇に隠れている遠くの風景は、まるでメゾティントでなされたかのような黒の絨毯を思わせる表現になっています。この作品で試みられたこのような夜の表現、黒い色調で満たされた闇の表現は、その後のレンブラントの版画制作に決定的な影響を及ぼすことになるのです。