《オンファル》
1645年、エッチング・ドライポイント、184 x 225 mm
アムステルダム、レンブラントハイス/ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam
ここに描かれるのはアムステルダムの南東、アムステル川沿いの景観です。かつて建っていた廃屋にちなんでそのままオンファル(オランダ語の動詞「オンファレン」 omvallen は「倒れる」を意味する)と呼ばれているこの地域を、レンブラントは幾度も素描の題材にしています。川に浮かぶ船、川向こうに見える水車や町並みはいかにもレンブラントがスケッチしたままの描写のようにも見えます。一方で、画面左側に描かれた大きな柳の木が枯れているように見える点や、描かれる場所が「廃屋」に語源をもっていることから、この風景がどこかでヴァニタス(虚栄、生のはかなさ)的解釈と結び付いていたことを否定することはできないでしょう。本作品は、レンブラントがドライポイントを全面的に使い出す最初の風景版画のひとつです。