《貝殻》
1650年、エッチング・ドライポイント・エングレーヴィング、97 x 132 mm
アムステルダム、レンブラントハイス
ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam
ここに描かれた貝殻はレンブラントが自分で所有していたさまざまなコレクションのひとつであったと思われます。レンブラントは唯の1点も静物画を描くことはなく、また、版画でもこれを唯一の例外として、静物的モティーフに取り組むことはありませんでした。その意味では、きわめて希少性の高い作品であるといえるでしょう。この貝殻は、遠く東方からもたらされたものです。この1点の版画に、どこまで時代的背景を読み取ることができるのかは難しい問題ではありますが、17世紀オランダが世界を視野に入れた貿易国であったこと、レンブラントの周囲には異国の文物が溢れていたことをこの貝殻は語ってもいます。