《3本の十字架》
第3ステート、1653年、ドライポイント、388 x 455 mm
大英博物館/ⓒThe Trustees of the British Museum
第4ステート、1653年、ドライポイント、385 x 450 mm
アムステルダム、レンブラントハイス/ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam
レンブラントの代表作《3本の十字架》は第5ステートまであります。描かれているのは群集を伴うキリスト磔刑の場面です。聖母は失神し、幾人もの人々は中央のキリストに祈りを捧げています。ところが、第4ステートでは異なる場面が表現されました。第3ステートまで見られていた中央のキリストの十字架のすぐ脇にいた馬上の人物は削除され、新たに槍をもった兵士がキリストのほうを向いて描かれました。第3ステートまではキリストが死ぬ瞬間、ないしは死んだ直後の場面が描かれています。だからこそ、画面手前のふたりの人物はキリストに背を向け、事件から遠ざかっていくのです。ところが、第4ステートでは「死にゆくキリスト」、あるいは死ぬ直前のキリスト、「なぜ我を見捨てるのですか」と神に叫ぶキリストの姿を描こうとしたように思われます。