《アトリエの画家》
1628年頃、油彩・板、248 x 317 mm
ボストン美術館/ⓒ Museum of Fine Arts, Boston
飾り気のない小さな部屋に、両手に絵筆やモールスティック、パレットなどを持った若い画家が立っています。彼は画面中央に大きく描かれた、イーゼルに置かれた板絵を遠くから見つめ、思索に耽っているように見受けられます。実際、イーゼルの前にあるはずの椅子はありません。普段、この画家も座って制作していたことは、ここに描かれるイーゼル下方の横棒が磨耗していることからも窺い知れます。イーゼルから離れたこの画家は、一体何をしているのでしょうか。当時の美術理論が、実際の制作に先立つ構想こそが重要だと繰り返し述べていたことを思い出すと、彼はこれから描くべき絵画の構想を練っていると考えられます。このアトリエに描かれるものすべてが絵画自体に関するものばかりで、それ以外のものが全く描かれていないことの意味が、ここで明らかになります。この質素なアトリエは全くの手仕事の現場にしか見えませんが、実は、高尚な絵画理念を視覚化したものでもあったのです。小さな作品ではありますが、画家レンブラントの気宇壮大を示す初期の傑作です。