《エッケ・ホモ(民衆に晒されるキリスト)》
第1ステート、1655年、ドライポイント、和紙、383 x 451 mm
大英博物館/ⓒThe Trustees of the British Museum
第8ステート、1655年、ドライポイント、358 x 455 mm
アムステルダム、レンブラントハイス/ⓒThe Rembrandt House Museum, Amsterdam
この版画は新約聖書に登場するピラトが逮捕されたキリストを民衆の前に引き出す場面を描いています。「エッケ・ホモ」というのは「この人を見よ」という意味で、民衆にピラトが発した言葉です。画面全体は、同じレイデンの敬愛すべき16世紀の偉大な版画家リュカス・ファン・レイデンの同主題作品から強い影響を受けています。本作品には第8ステートまであることが知られています。第6ステートと第7ステートで構図は大きく変更されています。レンブラントは第6ステートでキリストの下で見物する群集をすべて消去してしまったのです。さらに第7ステートにおいてレンブラントは群集に代えて建造物にふたつの開口部を設けました。このような構図の変更により奥行きは狭められ、この版画を見る者は一層壇上に立つキリストに近づくことになります。