コラム COLUMN
ズドラーストヴィチェ(こんにちは)!
アートライターの木谷節子です。
皆様、お正月は楽しく過ごされましたでしょうか? 私は、1月3日から仕事三昧。なのにこの原稿も結局ぎりぎりになってしまいました。
さてこのブログ、基本的には今年4月から始まる「大エルミタージュ美術館展」にちなみ、サンクトペテルブルクの歴史などを深くご紹介していくことに主眼を置いておりますが、今後ロシア方面に旅行する方もいらっしゃるかと思うので、参考までに事前に調べてもイマイチよくわからなかった、お役立ち情報を書いておきましょう。とはいえ、これは私が訪問した「9月後半のサンクトペテルブルクの事象」ですので悪しからず。
まずは旅行で気になるのは、気温とお天気。おそらく日本の皆さんは、「ロシア」と聞いただけで、「寒い国だから暖かくしなきゃ!」と思うかもしれません。6年前の5月後半、モスクワに行った時の私がそうでした。「パリの真夏でも、上着が必要なほど寒い日があるのだから、モスクワはもっと寒いに違いない!」。というわけで、日本の3月ぐらいの服装一式を持っていったら、あちらはまさかの異常気象。連日30℃越えの猛暑で、スーツケースになんとなく放り込んでおいた半袖シャツが大活躍したというわけです。
そんな経験から得た教訓は、「ロシアの気候は読めない」ということ。たとえばこれが、明らかに真夏や真冬の旅行であれば、持っていく服装は絞り込めます。が、今回行った9月後半というのもビミョーな季節。ロシアに行くぎりぎりまでいろんなサイトで、現地の1週間天気予報をチェックしていたのですが、ちょうど季節の変わり目なのか、ある日は最高気温16℃に最低気温7℃、ある日は最高12℃・最低3℃とかなりの幅がありました。「ロシアだし」念には念を入れて、私が持っている最強の防寒服、ダウンコートを持っていくべきか? いかざるべきか? かなり悩みましたね。なぜなら私のスーツケースは、こんなに小さいから。
家から成田空港まで、手に持っていくとしても、この頃東京は、まだ30℃近い残暑が続いていました。そんな中ダウンコートを持ち歩くなんて、一体何の罰ゲームですか? という感じです。
ということや、現地ではほとんどが屋内取材メインであることをかんがみて、今回私が決行したのは、重ね着大作戦。
実際この読みは当たったようで、サンクトペテルブルクに来てみると、思ったほど寒くはありませんでした。日本で言えば真冬の装備をする前の温かい冬もしくは晩秋、といった感じ? 体感温度には個人差があるので、あくまで私の印象ですが、街自体が「水の都」で湿気が多いためか、骨に突き刺さるような寒さもなく、しっかりとインナーを着こめば、トレンチコートや革のジャケットでもOKそうでした。
ただし、これは街中でのお話。もしあなたが、この時期、サンクトペテルブルクの郊外、フィンランド湾に面したピョートル大帝の夏の宮殿「ペテルゴーフ」などに行く時は、マフラーや手袋などワンランク上の装備をして、しっかり防寒していくのがおススメです。フィンランド湾から吹く風はメチャクチャ冷たく、激しいですから。ちなみにサンクトペテルブルクでは、10月になると初雪が降るとのこと。10月以降にこの街を観光する予定がある人は、本格的な真冬の装備が必要でしょう。
もうひとつ、この時期サンクトペテルブルクで必携したいのが「降りたたみ傘」。実は日本で、現地の天気を調べていた時、ほとんどの日に「&」がついていました。「晴れのち曇り」とか、「曇り」とかではなく、「晴れ! もしくは雨!」という感じ。あんまりこのマークが続くので、「ロシア気象庁の怠慢か?」と一瞬疑ったほどですが、その謎は、サンクトペテルブルクに行って解けました。
結論から言うと、これはロシア側の怠慢でもなんでもなく、本当の話。この時期のサンクトペテルブルクは、雨が降ったりやんだり。朝から絶望的なドシャ降りで「いくらなんでも、外の撮影はできないでしょ~」なんて思っていると、ケロッと晴れて虹まで出たり、逆に「晴れ間も見えるし、さすがに雨は降らないはず」なんて思っていると、にわかに空がかきくもり、雨がポツポツ降り出したりするのです。まるで壮大な「キツネの嫁入り」という様相で、現地ではそんなお天気対策として、フード付の上着を着ている人をよく見かけました。
このロシア版「キツネの嫁入り」は、まさに9月後半のサンクトペテルブルク特有のお天気なのだとか。こういう天気が続くと森ではキノコがたくさん生えるので、ロシアでは「キノコの雨」と言うそうです。
それでは、本日はこのへんで。
ダ スヴィダーニャ(さようなら)!
アートライター。現在「婦人公論」「マリソル」「Men’s JOKER」などでアート情報を執筆。アートムック、展覧会音声ガイドの執筆も多数。